目次
🔖 原文(日本語訳)
「生きとし生ける者は安楽をもとめている。
もしも暴力によって生きものを害するならば、
その人は自己の安楽をもとめていても、
実は安楽を得ることができない。」
――『ダンマパダ』第1章「双句品」第3偈
📝 逐語訳
- 生きとし生ける者:すべての生命ある存在(人間・動物を含む)。
- 安楽をもとめている:苦しみを避け、安らかで幸せな状態を求めている。
- 暴力によって生きものを害する:身体的・精神的な加害行為をもって、他者を傷つける。
- 自己の安楽をもとめていても、得ることができない:自分の幸福を願っていても、他者を害する行為を通してはそれを実現できない。
🧩 用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
生きとし生ける者 | あらゆる命ある存在への普遍的な呼びかけ。 |
安楽(スカ) | 心身の安らぎ・幸福・満足感。 |
暴力(ヒンサー) | 直接的な攻撃だけでなく、言葉、態度、搾取、差別など間接的な害も含む。 |
得ることができない | 表面的には満足を得ても、本質的な幸福には至らないという意味。 |
🌐 全体の現代語訳(まとめ)
すべての生きものは、苦しみから逃れて安らぎを求めている。にもかかわらず、他者を傷つけたり、押しのけたりして自分の安楽を得ようとしても、それは永続的な幸福にはならない。他者の痛みを無視した快楽には、真の心の平和は宿らない。
💡 解釈と現代的意義
この章句は、**「利己的な幸福追求」**の限界を教えています。現代社会では、自分の利益のために他者を傷つけることが正当化されがちですが、それは実のところ、自分自身の心の平安をも壊してしまう行為です。
仏教は「すべての命が安らぎを求めている」という共通の願いを見つめるところから、真の共感と慈悲の実践を導き出します。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
職場の人間関係 | 部下や同僚を圧迫することで成果を得ようとしても、信頼や協働は育たず、組織としての力は損なわれる。 |
顧客との関係 | 顧客に不安や不快を与える手法(過度な広告・販売)は、一時的に売上を得ても、信頼は崩壊する。 |
経営判断 | 環境・社会・他者に配慮しない選択は、企業価値やブランドを傷つける原因になる。 |
自己管理 | 他人を犠牲にして得た成功は、後悔や孤独を生み、内なる平和を得ることはできない。 |
✅ 心得まとめ
「真の安楽は、自他の安らぎの中にしか存在しない。」
自分だけの幸福を求めて、他者の苦しみを無視することは、いずれ自分の心をも痛めます。すべての命の安らぎを願い、他人の幸福を守ることこそが、本当の意味で自分自身をも守る行為なのです。
コメント