—— 評価を求めるな、力を磨け
孔子は、弟子たちのよくある悩みに対して、明快に答えた。
「君子とは、自分にまだ足りない力があることを恥じ、反省する人間であって、
人が自分をどう評価しているかを気に病むような人ではない」と。
成長したいならば、他人からどう見られているかではなく、
自分が本当にできているか、まだやるべきことは何かを見つめるべきだ。
外に目を向ける前に、内を磨け。
自己の未熟を直視し、淡々と修養に励む。それが、真の君子の道である。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、君子(くんし)は能(よ)くする無(な)きを病(うれ)え、
人(ひと)の己(おのれ)を知らざるを病(うれ)えざるなり」
注釈
- 「病(うれ)う」:ここでは“心配する・気にかける・反省する”という意味で使われている。
- 「能くする無き」:自分にまだ能力・実力・修養が足りていないこと。
- 「人の己を知らざる」:他人が自分の実力や価値を理解してくれないこと。
- この章句は、同趣旨の言葉が複数回(第16・80・364話など)繰り返されており、孔子がこの姿勢をいかに重視していたかが分かる。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
worry-about-growth-not-recognition
(評価より成長を気にせよ)reflect-not-complain
(愚痴るな、見つめよ)power-over-praise
(称賛より実力を)
この心得は、現代のキャリア形成や自己啓発にもそのまま通じます。
評価を求めるより、足りない自分を素直に見つめ、継続して努力を重ねること。その地道さが、真の信頼と実力につながるのです。
1. 原文
子曰、君子病無能焉、不病人之不己知也。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は、能(のう)くする無(な)きを病(うれ)うれい、人(ひと)の己(おのれ)を知らざるを病えざるなり。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 「子曰く、君子は能くする無きを病う」
→ 孔子は言った。「君子(徳ある人物)は、自分に能力がないことをこそ憂える」 - 「人の己を知らざるを病えざるなり」
→ 「他人が自分のことを認めてくれないことを悩んだりはしない」。
4. 用語解説
- 君子(くんし):道徳的に優れた理想の人物。人格者、リーダーにふさわしい存在。
- 病(うれ)う):ここでは「悩む」「憂える」「気にする」の意味。
- 無能(むのう):能力や実力がないこと。努力不足・修養不足も含む。
- 己を知らず(おのれをしらず):他人が自分を理解・評価してくれないこと。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「君子たる者は、自分に実力や能力が足りないことをこそ悩むべきであり、
他人が自分を認めてくれないことを悩んではならない」。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「自己修養を重んじ、外的評価に左右されるな」**という孔子の自己成長観を端的に示しています。
- 成熟した人物(君子)は、自らの能力不足・学びの浅さを憂うことで自己を高めていく。
- 一方で、「評価されない」「認められない」と嘆くのは小人(しょうじん)的な思考であり、成長を妨げる。
- 真の成長者は、「他人が見てくれるかどうか」ではなく、「自分が真に成長しているか」に関心を持つ。
7. ビジネスにおける解釈と適用
◆ 「評価より成長に集中せよ」
昇進や賞賛に一喜一憂するより、「自分に何が足りないか」を見つめる方が、長期的な価値を生む。
◆ 「自己責任で実力を磨く人材が伸びる」
他人の評価に依存する人より、自律的に学び・反省し・行動を改善する人が、真に信頼される。
◆ 「不満を言う前に、力をつけよ」
「なぜ認められないのか?」ではなく、「認めざるを得ない実力を、自分が持っているか?」を問うべき。
◆ 「内省と行動に軸を置くリーダーが、信頼される」
リーダーは外部の評価に流されず、自らの行動と成長を律する姿勢を持つことで、周囲の信頼を得る。
8. ビジネス用心得タイトル
「嘆くより、磨け──評価を求めず、実力を高めよ」
この章句は、現代の職場における“承認欲求の罠”を超え、「自律・成長・内省」の価値を再確認させる名言です。
若手育成、リーダー研修、自己成長型組織の育成などにおいて、自己責任と内発的動機を育てる指針として極めて有効です。
コメント