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四つの正しい語り、すなわち聖者のことばの道


■ 引用原文(『ダンマパダ』第八章「ことば」第十一偈)

善い教えは最上のものである、と聖者は説く。(これが第一である)。
理法を語れ。理法にかなわぬことを語るな。これが第二である。
好ましいことばを語れ。好ましからぬことばを語るな。これが第三である。
真実を語れ、虚偽を語るな。これが第四である。


■ 逐語訳と段階解釈

  1. 第一:善い教えを語れ(サッダンマ・カター)
     聖者は「善き教え」を語ることこそが最も優れた言葉の使い方であると説く。
     ― 他者を導き、目覚めをもたらす言葉。
  2. 第二:理法にかなうことを語れ(ダンマ・アヌルッダ・カター)
     語る内容は、真理・道理・道徳に即していなければならない。
     ― 自分の都合や妄想ではなく、正しさに基づく言葉。
  3. 第三:好ましいことばを語れ(ピヤ・カター)
     言葉は優しく、心地よく、相手の心を和らげるものでなければならない。
     ― 相手の尊厳を大切にする語り。
  4. 第四:真実を語れ(サッチャ・カター)
     虚偽ではなく、誠実で正直な言葉を用いること。
     ― 信頼と徳の基礎である。

■ 用語解説

  • 善い教え(善法・サッダンマ):仏教の教義だけでなく、人を善に導くすべての内容。
  • 理法(ダンマ):宇宙・人間・倫理における真理・道理。自然の法則にも等しい。
  • 好ましいことば(ピヤ・ヴァチャナ):聞いて心が和らぎ、反発や不安を起こさない言葉。
  • 真実(サッチャ):事実にかなった誠実な言葉。仏教における五戒「妄語戒」に対応。

■ 全体の現代語訳(まとめ)

聖者は、次の四つの言葉のあり方を最上と説いている。
一に、善い教えを語ること。
二に、真理にかなった内容を語ること。
三に、聞く者が心安らぐような好ましい言葉を語ること。
四に、虚偽を避けて、常に真実を語ることである。
これらは、話す者の内面の成熟を反映し、徳と信頼を育む道である。


■ 解釈と現代的意義

この偈は、「正しい語りとは何か」を、四つの観点から明確に説いた仏教的コミュニケーションの理想形です。

今日の社会では、「情報」「主張」「表現」が溢れていますが、
その中で私たちが忘れがちなのが「言葉の質」と「心への影響力」です。

  1. 役立つ内容(善い教え)
  2. 事実に基づく正しさ(理法)
  3. 聞く側への思いやり(好ましさ)
  4. 誠実さ(真実)

この4つを揃えて初めて、「人の心を導くことば」になるという深い洞察です。


■ ビジネスにおける解釈と適用

原則適用例
善い教えを語れ会議・教育・指導の場では、問題批判よりも「どう成長できるか」「どう改善できるか」を中心に語る。
理法にかなうことを語れ論理や倫理に則した説明をする。感情論や誤情報に流されず、事実ベースで話す。
好ましいことばを語れクレーム対応やフィードバックの際、相手の尊厳を守り、建設的な表現を選ぶ。
真実を語れ成果・失敗・進捗など、隠したり誇張せずに正直に伝えることで信頼が深まる。

■ 心得まとめ

「語ることは行為である。四つの善語をもって信頼を築け」

言葉は情報を伝えるだけではなく、「徳」「信頼」「敬意」を築く手段です。
この偈が教えてくれるのは、語る人の心が整っていれば、そのことばもまた人を整えるという事実です。
ビジネスにおいても、話す内容・誠実さ・配慮の有無が、成果以上に信頼を決定づけます。
この四原則を日々の会話や発信に意識することで、あなたの言葉は人を動かし、場を変える力を持ちます。

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