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言葉が立派でも、心まで立派とは限らない

語ることと、真に優れていることは別の話

孔子はあるとき、弟子たちにこう語った。

「言葉が立派で、論じる内容がもっともらしいというだけで、その人を“君子”だと決めつけてはならない。
その人物が本物の君子なのか、それとも見かけだけを装った“色荘(しきそう)”の者なのか――言葉だけでは、区別はつきにくいものだ」

つまり孔子は、雄弁や説得力のある話し方に惑わされるなと言っている。
見かけや言葉の巧みさの裏に、誠実な行動・一貫した生き方・中身の伴った人格があるのかどうか――そこが重要なのだ。

「よくしゃべるから賢い」「話がうまいから信頼できる」といった短絡的な評価は、真に人を見抜く目を曇らせてしまう


引用(ふりがな付き)

子(し)曰(い)わく、論(ろん)の篤(あつ)きに是(これ)を与(く)みすれば、君子(くんし)なる者(もの)か、色荘(しきそう)なる者(もの)か。


注釈

  • 論の篤き(あつき):議論の内容が深く、もっともらしく見えること。
  • 是れを与す(これをくみす):賛同する、肯定的に受け取ること。
  • 君子(くんし):人格者・徳のある人。孔子が目指す理想像。
  • 色荘者(しきそうしゃ):見かけや態度は立派だが、内面が伴わない人物。表面だけを飾った偽物の意。

1. 原文

子曰、論篤是與、君子者乎、色莊者乎。


2. 書き下し文

子(し)曰(いわ)く、論(ろん)の篤(あつ)きに是(これ)与(くみ)すれば、君子(くんし)なるものか、色莊(しきそう)なるものか。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「子曰く、論の篤きに是れ与すれば」
     → 孔子は言った。「誰かが真面目そうな議論をしていると、それに賛同するというが──」
  • 「君子者か、色莊者か」
     → 「それは真に徳のある君子なのか、それとも見かけだけを取り繕った者なのか?」

4. 用語解説

  • 論の篤き(ろんのあつき):言葉がまじめで、内容が重々しい議論。表面的には「真面目で立派そう」に見える話。
  • 是れ与す(これくみす):賛成する、一緒に支持すること。
  • 君子(くんし):人格高潔で徳ある人物。孔子が理想とした人間像。
  • 色莊(しきそう):見た目を荘重に装っているが、中身が伴っていない人。**「外見だけ立派に見せる人」**という否定的ニュアンス。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子はこう言った:

「重々しくまじめな議論に見えるからといって、それに賛同する人がいる。
しかしそれが本当に君子によるものか、ただ外見を取り繕っただけの“見せかけの人物”によるものか──よく見極める必要がある。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「見かけの立派さ」に惑わされず、本質を見抜けという孔子の警告です。

● 本質的メッセージ:

  • 言葉が立派でも、その中身・人格・動機が伴っていなければ、それは「色莊」にすぎない。
  • 君子か否かを**“言葉”ではなく“行動と本質”で見極めよ**。
  • まじめそうな話だからといって無批判に賛同するのは危険である。

7. ビジネスにおける解釈と適用

❶ 「言葉が立派=中身がある」とは限らない

– プレゼン・報告・提案の中で、言葉が美しくても、実態が伴っていないことがある。見た目だけのロジックや空疎な理念には注意を。

❷ 「人物の評価は“態度”より“行動”で測れ」

– 外見が真面目で、話し方が丁寧な人が「信頼できる」とは限らない。中身(行動・実績・一貫性)を見て評価せよ

❸ 「“見かけ倒し”に巻き込まれるな」

– 重々しい議論や正論に見える内容でも、その背後にある意図・実効性・倫理性を常に問い直すことが重要。


8. ビジネス用心得タイトル

「立派な言葉に騙されるな──“本物”と“見せかけ”を見抜け」


この章句は、孔子自身の「言葉の力」と「人を見る目」の本質的な考え方を端的に示しています。

今の時代にも通じるのは、**「本質を問わず、言葉の表面で評価する危うさ」**です。
SNS、会議、提案書、理念──すべてにおいて「立派に見える」ものが増える中、本当に信頼すべきものを見極める目を持つことが、個人と組織の成熟を決定づける要素になるのです。

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