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■引用原文(日本語訳)
第一〇章 暴力(ダンダヴァッガ)第133偈
荒々しいことばを言うな。
言われた人々は汝に言い返すであろう。
怒りを含んだことばは苦痛である。
報復が汝の身に至るであろう。
(『ダンマパダ』第133偈)
■逐語訳
- 荒々しいことばを言うな:乱暴で攻撃的な表現を慎め。
- 言われた人々は汝に言い返すであろう:その言葉は相手の怒りを誘い、必ず反応として自分に返ってくる。
- 怒りを含んだことばは苦痛である:感情に任せた発言は、自他ともに心を傷つける。
- 報復が汝の身に至るであろう:他者への言葉の攻撃は、巡り巡って自らの苦しみとなって返ってくる。
■用語解説
- 荒々しいことば(ファルサ・ヴァーチャー):侮辱、皮肉、暴言、脅しなど、他者を傷つける言動全般。
- 言い返す(パティワーダ):応酬・反撃の意。言葉は一方通行ではなく、関係性の中で反作用を持つ。
- 報復(パティカーラ):仏教における因果応報(カルマ)の一形態。悪しき行いは悪果をもたらす。
■全体の現代語訳(まとめ)
乱暴な言葉を発してはならない。なぜなら、その言葉を聞いた者は反撃してくるだろう。怒りに満ちた言葉は相手に苦痛を与えると同時に、自分自身にもその報いが返ってくることになるからである。
■解釈と現代的意義
この偈は、「言葉のカルマ」を鋭く指摘しています。
言葉は目に見えないが、その影響は非常に強く、人間関係や社会的信用を左右するものです。
現代においても、SNSや職場、家庭など、私たちは多くの場面で「言葉を選ぶ責任」を問われています。怒りや苛立ちに任せた発言は、その瞬間は正当化されるように思えても、結果的に自他を深く傷つけるブーメランとなって戻ってくるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
コミュニケーションの質 | クレーム対応・部下指導の際に、荒い言葉を使えば信頼を損ない、逆効果となる。冷静かつ尊重のある言葉が最も効果的。 |
社内文化と心理的安全性 | 社内で荒い言葉が常態化すれば、メンバーの萎縮と不信が生まれる。健全な職場には、敬意ある対話が不可欠。 |
リーダーシップの品格 | 感情的な発言は、リーダーの力量や理性を疑われる原因となる。沈黙や柔らかい言葉の方が、時に大きな影響をもたらす。 |
■心得まとめ
「怒りの言葉は、まず己を傷つける」
この偈は、仏教における非暴力(アヒンサー)を「言葉」にも徹底して適用すべきであるという姿勢を示しています。
他者への暴言や皮肉は、自分の人格・評判・信頼をも蝕み、やがてその報いを受けることになるのです。
現代のビジネス社会でも、「強く言えば伝わる」という考え方はすでに時代遅れ。誠実で温かな言葉のほうが、人の心を動かし、長期的な成果をもたらします。
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