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📖 原文引用(『ダンマパダ』第二五章 第372偈)
明らかな智慧のない人には、精神の安定統一がない。
精神の安定統一していない人には、明らかな智慧がない。
精神の安定統一と明らかな智慧とが備わっている人こそ、すでにニルヴァーナの近くにいる。
(原文:
Natthi jhānaṃ apaññassa,
paññā natthi ajhāyato;
Yamhi jhānañca paññā ca,
sa ve nibbānasantike.
―『Dhammapada』Ch. 25, v.372)
🔍 逐語訳(逐文・簡潔)
- Natthi jhānaṃ apaññassa:智慧なき者に、禅定(精神集中・安定)は無い。
- Paññā natthi ajhāyato:禅定のない者に、智慧は無い。
- Yamhi jhānañ ca paññā ca:禅定と智慧の両方を持つ者は、
- Sa ve nibbāna-santike:まさに涅槃に近い者である。
📘 用語解説
- 禅定(jhāna):心を一つに集中させ、静けさと明晰さを得る精神の状態。「サマーディ(samādhi)」とも。
- 智慧(paññā):単なる知識ではなく、「物事の本質を見抜く洞察」。煩悩を断つ力となる。
- 涅槃(nibbāna):煩悩が完全に消え、苦しみから解放された究極の安らぎの境地。
- 近づく(santike):物理的な距離ではなく、「心の状態が極めて近い」ことを示す。
🗣️ 全体の現代語訳(まとめ)
心の集中(禅定)がない者には、真の智慧は生まれない。
また、真の智慧がない者に、心の静かな集中は生じない。
この二つ――精神の統一と明晰な智慧――がそなわっている人こそ、
涅槃(究極の安らぎ)の境地に近づいている者である。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、仏教修行における「定慧等持(じょうえとうじ)」の教えを端的に示しています。
「定」と「慧」は車の両輪のようなもの――心の集中(定)によって雑念を抑え、そこから物事の本質(慧)を見抜くことができる。
そして、慧によってさらに定が深まっていく。
現代でも、集中力と洞察力が融合した人こそ、迷いのない判断と行動を取ることができるのです。
💼 ビジネスにおける解釈と応用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
集中と戦略思考 | 雑念を捨てて一つの仕事に集中する力が、深い洞察や革新を生む。 |
判断力と冷静さ | 感情や雑音に流されず、冷静に本質を見抜く力を持つためには、まず心の安定が必要。 |
人材育成 | 部下や後進に対して、知識(教育)だけでなく、集中する習慣(環境づくり)を教える必要がある。 |
問題解決 | 表面的な解決ではなく、心を静めて「本当の原因」を見つける力が、持続的な成果につながる。 |
🧠 心得まとめ(ビジネスパーソン向け)
「集中がなければ、真理は見えない。見えなければ、集中も深まらない。」
深い集中によってこそ、あなたの智慧は目を覚ます。
情報やタスクに追われる日々でも、意識的に心を整え、静けさと洞察の両輪を育てること。
それが、人生という道を確かな足取りで進むための、最も力強い「マインドセット」である。
この偈は、マインドフルネス・集中力トレーニング・意思決定の指針など、現代的応用が極めて広い重要な教えです。
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