■ 引用原文(日本語訳)
智慧乏しき愚かな人々は放逸にふける。
しかし心ある人は、つとめはげむのをまもる。
隊商の統領が財宝を(大切に)まもるように。
――『ダンマパダ』第四章「はげみ」第10節
■ 逐語訳(一文ずつ現代語訳)
- 知恵が乏しい愚かな者たちは、怠惰にふけってしまう。
精神的な洞察を欠いた人々は、自制も努力も忘れ、放逸に流される。 - しかし、心ある(気づきのある)人は、精進を守り続ける。
目覚めた者は、怠りを遠ざけ、日々の努力を大切に持続する。 - ちょうど、隊商の指導者が貴重な財宝を守るように。
それは単なる努力ではなく、人生を導く最大の資産として守られる。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
放逸(パーマーダ) | 精神的な怠慢、注意力の喪失。仏教では堕落の根本原因。 |
つとめはげむ(アッパマーダ) | 意識的に努力し、怠けず、気づきをもって行動すること。 |
心ある人(サッタ・パッジャーノ) | 気づき・内省・智慧を備えた者。 |
隊商の統領(カリヤーナ・サーラティ) | 責任あるリーダーや守護者。ここでは比喩的に「自己の精神を守る者」。 |
財宝(ダンナ) | 目に見える富ではなく、ここでは「努力」「精進」「徳」のこと。 |
■ 全体の現代語訳(まとめ)
智慧に欠けた者は、怠惰に生き、努力することの価値を知らない。
しかし、心ある者――内省し、目覚めている者は、努力という財宝を失わないように守る。
それは、隊商のリーダーが貴重な宝を命がけで守るように、かけがえのない価値として保持されるべきものである。
■ 解釈と現代的意義
この節は、「努力を一時の気まぐれではなく、生涯守るべき価値として捉えよ」という教えです。
怠惰は一見楽に見えますが、人生の根本を徐々に蝕む毒のようなものです。
反対に、日々の精進は地味でも、積み重ねることで人生そのものを価値ある方向に導きます。
現代社会においても、この「努力を宝として守る意識」が、成長・信頼・幸せの基盤となるのです。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
セルフマネジメント | 習慣化した努力(例:日報、計画立案、朝の読書など)を「財産」と捉え、大切に継続する意識を持つ。 |
プロ意識の育成 | 優れた職業人は、「当たり前のことを当たり前に続ける」ことの価値を知っている。 |
成果への道筋 | 努力はすぐに成果を生まないが、長期的には信頼・実力・影響力として必ず実を結ぶ。 |
リーダーシップ | 部下や後輩の「努力の芽」を励まし、守り育てることも、リーダーの大切な責務。 |
■ 心得まとめ
「努力は偶然の産物ではない。守り抜くべき宝である。」
努力とは、やる気がある時だけするものではない。
それは日々磨き続ける「生き方」であり、
怠惰な流れの中でも、自らを保ち続ける「意志の盾」である。
宝のように努力を守り、積み重ねる者だけが、
やがて人生の真の果実を手にすることができる。
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