目次
■引用原文(日本語訳)
一九 聖者の説きたもうた真理を喜んでいる人々は、
そのとき、かれらの説くことをことばでも実行する。
かれらは忍耐と柔和と瞑想とのうちに安定し、
学問と知能との真髄にも達したのである。
――『ダンマパダ』 第二二章 第十九節(章の結び)
■逐語訳
- 聖者の説いた真理を喜ぶ:仏陀や賢者の教えを、ただ聞くだけでなく心から喜び、価値として受け取る。
- ことばでも実行する:語る内容と日々の行動が一致している。知行合一の実践。
- 忍耐・柔和・瞑想に安定する:怒りに流されず、柔らかさと静けさの中に心を置き、内面を磨いている。
- 学問と知能の真髄に達する:知識・思考・体験が一体化し、智慧へと昇華された状態。
■用語解説
- 聖者(アーリヤ):悟りに近づいた人。仏陀やその弟子たちを含む。
- 真理(ダルマ):因果・無常・縁起など、仏教の根本法則。
- 忍耐(クサンティ)・柔和(マッダヴァ)・瞑想(ジャーナ):人格修養の三要素。怒りに流されず、優しく、深く静まる心の型。
- 真髄(サーラ):エッセンス、核心。知識の実質、内に根差した智慧。
■全体の現代語訳(まとめ)
聖なる教えを心から喜んで受け止める人々は、
その言葉を語るだけでなく、自らの行動でもそれを体現する。
彼らは怒りを捨て、優しく、静かな心のうちに安定しており、
その生き方を通して、学びと知性の本質を手に入れている――
と仏陀は、この章の締めくくりとして語る。
■解釈と現代的意義
この詩句は、「学問の理想的な完成像」を表しています。
それは、知識を蓄えただけの人ではなく、言葉と行動が一致し、静かで、優しく、深く、心が落ち着いている人物です。
この境地は、ただ書物を読むことや知識を得ることだけでは到達できず、
実践・瞑想・内省・日常の中での実行を通じて初めて完成されます。
この節は、第二二章で説かれてきた「学び→判断→実践→平静→知恵」というプロセスの最終点として、
智慧ある人間の生き方そのものを象徴していると言えるでしょう。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務への応用 |
---|---|
真のプロフェッショナル | 言葉だけでなく、態度・行動・判断が一致した人が、最も信頼される。 |
リーダーの姿 | 忍耐力・柔和さ・内省力を備え、言動にブレがない人物こそ、真のリーダー。 |
組織文化 | 経営理念や社訓が「掲げるだけ」でなく、社員一人ひとりが「体現」するとき、組織は成熟する。 |
学びの深まり | 教育や研修のゴールは、知識の獲得ではなく、「人格への反映」である。 |
■心得まとめ
「学びは、静けさに結晶する。語るより、生きよ。」
学んだことを誠実に実行し、優しさと静けさの中に安定しながら、
人として深まっていくこと――それが仏陀の説いた「学問の果て」である。知と徳が融合し、言葉と行いが一つになるとき、
人は声に惑わされず、自他ともに照らす光となるのです。
コメント