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智慧と精進により、苦しみを超えていけ


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■引用原文(日本語訳)

第十章 暴力(ダンダヴァッガ)第144偈

鞭をあてられた良い馬のように、勢いよく努め励めよ。
信仰により、戒しめにより、はげみにより、精神統一により、
真理を確かに知ることにより、
知慧と行ないを完成した人々は、思念をこらし、
この少なからぬ苦しみを除けよ。

(『ダンマパダ』第144偈)


■逐語訳

  • 鞭をあてられた良い馬のように:目覚めを促された優れた者が、すぐに反応して努力するさま。
  • 勢いよく努め励めよ:怠けず、力強く、真理に向かって進め。
  • 信仰(サッダー)・戒(シーラ)・はげみ(ヴィーリヤ)・精神統一(サマーディ)・真理の理解(パッニャー):解脱への五つの力・修行の柱。
  • 思念をこらす(サティ):常に気づきと意識を保ち、自分を見失わないこと。
  • この少なからぬ苦しみを除けよ:人生の中にある様々な苦しみ(老・病・死・悩み)から解き放たれる道。

■用語解説

  • 良い馬(アッサ・ウッタマ):訓練された優れた馬は、少しの刺激で即座に応答する。ここでは「目覚めた修行者」の比喩。
  • 信仰(サッダー):仏・法・僧に対する敬信、そして自己の可能性への信頼。
  • 戒(シーラ):身体・言葉・心の行動を整える倫理的規律。
  • はげみ(ヴィーリヤ):たゆまぬ努力、精進の姿勢。
  • 精神統一(サマーディ):集中によって心を一点に澄ませること。
  • 智慧(パッニャー):真理の正しい理解と見極め。
  • 思念(サティ):気づき、注意深さ、内省。

■全体の現代語訳(まとめ)

優れた馬が軽く鞭を受けただけで全力で走り出すように、
あなたも目覚めたなら、勢いよく努力しなさい。
信仰、戒律、精進、精神集中、真理への洞察――
それらを土台にして、自己を完成させていくのだ。
常に気づきを保ち、今ここにある苦しみの数々から、自由になっていきなさい。


■解釈と現代的意義

この偈は、「目覚めた者がすぐに実践に入るべきである」という覚醒後の行動の重要性を強く説いています。
気づきがあっても、行動しなければ何も変わらない。
そのために必要なものが、「信仰・戒律・努力・集中・智慧」の五要素。
これは仏教における修行の基本構造でもあり、「智慧と行動の融合」こそが、苦しみを乗り越える唯一の道であることを示しています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
気づきを即行動に移す力改善点・課題・チャンスに気づいたら、考えているだけでなく即座に動くことで、大きな成果につながる。
5つの力の現代的応用信頼(信仰)/倫理(戒)/努力(はげみ)/集中(精神統一)/知見(真理の理解)を日々の仕事に生かす。
リーダーとしての成熟と実践理念だけでなく、実際の行動・言葉・選択においてこれらの原理を体現することが、組織に信頼をもたらす。

■心得まとめ

「気づいたなら、すぐに歩め。智慧と努力は苦しみを超える力となる」

目覚めた者が行動を起こすのに、遅れは不要です。
「信頼」「規律」「努力」「集中」「智慧」を備えた人は、日々の中で自己を磨き、
どんな困難や苦しみにも押し流されることなく、それを乗り越える力を持つようになります。

自らを鞭打つことなく、真理への道を静かに、確実に進みなさい――それが仏陀の示す修行の姿です。


この偈は、第143偈の「自律と内面の強さ」に続き、「行動への転換」をテーマとした締めくくりのような位置づけにあります。

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