目次
🔖 原文(日本語訳)
第三〇章「楽しみ」より一節
「勝利からは怨みが起る。敗れた人は苦しんで臥す。
勝敗をすてて、やすらぎに帰した人は、安楽に臥す。」
――『ダンマパダ』 第三〇章 第一偈
📝 逐語訳
- 勝利からは怨みが起る:勝者が生まれれば、その影には怨みを抱く敗者や周囲が必ず存在する。
- 敗れた人は苦しんで臥す:敗者は屈辱と痛みに心を悩ませ、心身ともに安らげない。
- 勝敗をすてて、やすらぎに帰した人:勝つことにも負けることにも執着せず、争いから離れた者。
- 安楽に臥す:そのような人は、心に波風が立たず、静かな安らぎの中で眠ることができる。
🧩 用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
勝利 | 世俗的な勝ち・成功・優位性。 |
怨み | 恨み・憎しみ・妬みなど、負の感情。 |
敗北 | 競争や争いにおける失敗・劣位。 |
やすらぎ(寂静) | 争い・煩悩から離れた心の平安。 |
勝敗をすてる | 執着を離れ、比較や対立の軸から自由になること。 |
🌐 全体の現代語訳(まとめ)
勝ち負けにこだわる限り、人の心は怨みや苦しみに満ちる。勝っても妬まれ、負ければ悔しさに苦しむ。しかし、勝ちも負けも手放し、競争を超えて静かな心境に至った人だけが、本当の意味で心安らかに眠ることができるのである。
💡 解釈と現代的意義
この章句は、現代社会における「競争」や「比較」の風潮を問い直す言葉です。人と比べて勝ち続けようとすれば、常に不安と敵意が付きまとう。一方で、比べることをやめた瞬間に、人は深い安心と本質的な幸福を得られる――そのような生き方の選択を仏陀は説いています。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
職場の競争 | 他者に勝とうとする意識は、自他共に疲弊させる。協働と共感が組織を健やかにする。 |
目標管理 | 数値目標や評価ばかりを気にするのではなく、プロセスや誠実な姿勢を重視することで、心の安定が保たれる。 |
リーダーシップ | 勝ち負けで部下を評価せず、それぞれの役割と成長に目を向けることで信頼と安心が育つ。 |
キャリア形成 | 他人との比較ではなく、「自分はどう在りたいか」を軸にすることで、長期的に充実したキャリアが築ける。 |
✅ 心得まとめ
「勝ちを求める者は、常に恐れと競争に囚われる。
勝ち負けを超えたとき、初めて本当の自由が訪れる。」
争いの結果に一喜一憂するよりも、心の安らぎを選び取る姿勢が、人生を静かに力強く前進させます。ビジネスの世界においても、真の強さとは競争に勝つことではなく、そこから自由であることなのです。
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