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■引用原文(日本語訳)
「また、人が成果を期待して、その堅固さにより、美徳と享楽と実利を、執着して固持する時、それは激質的な堅固さである。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第34節)
■逐語訳
人が、
・成果(報酬・果報)を期待しながら
・道徳的善行(ダルマ)、
・快楽的な楽しみ(カーマ)、
・実利・財的利益(アルタ)
――これらを手放すことなく、強く執着して固持するとき、
そのような意志・堅固さ(ドリティ)は、
激質(ラジャス)に基づく意志であるとされる。
■用語解説
- 堅固さ(ドリティ):精神的な意志力、継続力。
- 激質(ラジャス):情熱・欲望・成果志向・執着に満ちた性質。
- ダルマ:道徳・義務・善行。
- カーマ:快楽・情愛・自己満足的な楽しみ。
- アルタ:実利・経済的成功・社会的成果。
- 成果を期待する(ファラアーシャ):結果に心を囚われながら努力すること。
■全体の現代語訳(まとめ)
成果を期待しながら、
道徳(ダルマ)や楽しみ(カーマ)、経済的成果(アルタ)に執着して、
それらを絶対視し、手放すことなく貫こうとする意志――
このような意志の堅固さは、ラジャス(激質)的な性質であり、
一見強く見えても、実は欲望に縛られた意志である。
■解釈と現代的意義
この節では、「欲望を土台にした意志力」の限界が示されます。
目標や善行を掲げながらも、成果や報酬への執着が心を縛るとき、
その意志は純粋ではなく、かえって心を不安定にさせます。
多くの努力が空回りするのは、まさにこの「結果への過剰な執着」が原因です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での例 |
---|---|
目標設定の落とし穴 | 数字や成果に固執しすぎると、プロセスの質が下がり、部下への圧力にもつながる。 |
評価への依存 | 他者からの承認・昇進・報酬を動機にすることで、軸のない働き方になる。 |
「良いこと」の執着 | 社会貢献や道徳的使命を掲げながらも、それが賞賛を得る手段になっている場合、本質を見失う。 |
バランスの崩壊 | 楽しみや実利の追求が「目的化」してしまい、本来の使命や理性を見失う危険。 |
■心得まとめ
「成果を求める意志は、やがて自分を縛る」
意志の力とは、本来、自由と自己統制をもたらすものである。
しかし、その意志が「報酬への執着」によって動かされるとき、
それはもはや欲望に仕える意志となる。
ギーターは問う――あなたの意志は、どこから生まれているのか?
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