目次
■原文(日本語訳)
第2章 第20節
クリシュナは言った。
「彼は決して生まれず、死ぬこともない。彼は生じたこともなく、また存在しなくなることもない。不生、常住、永遠であり、太古より存する。身体が殺されても、彼は殺されることがない。」
■逐語訳
- 彼は決して生まれず(ナ・ジャーヤテ):魂(アートマン)は誕生することがない。
- 死ぬこともない(ナ・ムリヤテ):魂は死ぬことも終わることもない。
- 生じたこともなく、存在しなくなることもない(ナ・アイヤム・ブートヴァー・バヴィター・ナ・ブーヤハ):過去に新たに作られたものではなく、未来に消えることもない。
- 不生・常住・永遠(アジャ・ニティヤ・シャーシュヴァタ・アヤム):生まれず、常に存在し、永遠に変わらない存在。
- 太古より存する(プラーナ):時間の始まりより存在している。
- 身体が殺されても、彼は殺されることがない(ナ・ハンヤテ・ハニャマーネ・シャリーレ):身体が滅んでも、魂は不滅。
■用語解説
- アートマン(彼):ここでの「彼」とは、身体の背後にある真の自己=魂を指す。
- アジャ(不生):生まれたことがない、創られていないもの。
- ニティヤ(常住):永続するもの。時間の影響を受けない存在。
- シャーシュヴァタ(永遠):一時的でなく、絶え間なく存在し続けるもの。
- ハニャマーネ・シャリーレ(身体が殺されても):肉体が破壊されることと、魂の死は無関係であるという強調。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは言う。「魂は決して生まれることもなければ、死ぬこともない。それは過去に生じたものではなく、将来消えるものでもない。魂は、生まれず、変化せず、永遠に存在し続ける本質そのものである。だから、たとえ身体が滅びたとしても、魂が死ぬことは絶対にない」と。
■解釈と現代的意義
この節は、アートマン(魂)の完全なる不滅性と永遠性を、明確かつ包括的に宣言しています。
私たちは「生まれた」「死んだ」という現象に意識をとらわれがちですが、それは身体に関わる限定的な視点です。
魂は「時間を超えて在るもの」――それを知ることによって、死の恐れ・喪失の苦しみ・変化の不安を超える智慧が育まれます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
永続的価値への志向 | 一時的な流行や短期的利益ではなく、永続的に意味のある価値(理念・信頼)を追求する姿勢。 |
変化に動じない心 | 人事・業績・社会情勢の変化に揺れず、「自分の本質は変わらない」と知って冷静さを保つ。 |
理念ドリブン経営 | 市場の変化に左右されず、初期に掲げた理念やビジョンに忠実にあり続ける企業は、長期的に信頼を勝ち取る。 |
個人の精神的持続力 | 外的評価に頼らず、内なる価値を信じて活動を継続することで、途中の挫折や苦難に折れずにやり抜ける。 |
■心得まとめ
「魂は生まれず、死なず、永遠に在る。変化を超えて、変わらぬ自分に立ち返れ」
私たちは常に「失うこと」に怯えます。地位・健康・人間関係・命……
しかし、クリシュナは語ります。「本当のあなた(アートマン)は、そもそも生まれたこともなく、決して死ぬこともない」と。
この不動の自己を認識することが、迷いなき行動、揺るがぬ信念、そして真の自由をもたらすのです。
次の第21節では、こうした「不死の自己を知る者」の行動について語られます。
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