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■引用原文(日本語訳)
愚人とともに歩む人は長い道のりにわたって憂いがある。愚人と共に住むのは、つねにつらいことである。仇敵とともに住むように。
心ある人と共に住むのは楽しい。親族に出会うように。
― 『ダンマパダ』 第十五章「楽しみ」 第207偈
■逐語訳
- 愚人とともに歩む人は長い道のりにわたって憂いがある:愚かな者と共に人生を進むことは、苦悩と不安に満ちた長い旅となる。
- 愚人と共に住むのは、つねにつらいことである:日々を共に過ごすことで、精神的な負担や摩擦が絶えない。
- 仇敵とともに住むように:それはまるで、自分を憎む敵と同居しているかのように、危うく、緊張を強いられる。
- 心ある人と共に住むのは楽しい:知性と慈しみを備えた人と暮らすことは、精神の喜びである。
- 親族に出会うように:まるで長く離れていた家族に再会するかのような、温かく自然な喜びがある。
■用語解説
- 愚人(バール):無知・利己・軽率で、善悪の分別がなく、他人や社会に悪影響を与える存在。
- 心ある人(パンディタ):智慧を持ち、慈悲と理性に従って行動する者。仏教においては善知識とされる。
- 仇敵(しゅうてき):害意を持つ者。対立し、安心して共にいられない存在の象徴。
- 親族(しんぞく):心が通い、自然に安心できる相手。精神的つながりと信頼の象徴。
■全体現代語訳(まとめ)
愚かな人と一緒に生きていくことは、まるで敵と共にいるような苦しみに満ち、人生の道のり全体に影を落とす。
しかし、心ある人と過ごすとき、私たちはまるで大切な家族に再会したかのような喜びと安心を感じる。
この偈は、「誰と共に生きるか」によって、人生の質が決定的に変わることを教えている。
■解釈と現代的意義
この偈は、交友・同居・協働といった「人間関係」が心に与える影響の深さを鋭く説いています。
特に「愚者との関係」は、相手の言動に振り回され、無用な争いや疲労を生み出しやすいものです。
一方で「心ある人」との関係は、自らの成長・癒し・幸福を自然にもたらします。
現代社会の複雑な人間関係の中で、自分が「誰と時間を過ごすか」「どんな関係を築くか」を意識することが、精神の健全さを守る鍵となります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・応用例 |
---|---|
チーム形成・採用 | スキルだけでなく、人格・倫理観を重視してチームメンバーを選ぶことが、組織の健全性と生産性を高める。 |
パートナーシップ | 取引先・業務提携先も、利得だけでなく「信頼できるかどうか」「価値観が一致しているか」で判断すべき。 |
人間関係のストレス回避 | 愚かな言動に振り回される環境からは、意識的に距離を取り、心を守る技術が重要。 |
リーダーの責任 | 部下や仲間が「共にいて心地よい存在」であるかどうかは、リーダー自身の影響力と人格に直結する。 |
■心得まとめ(ビジネス視点)
「誰と組むか、誰と歩むか――それが、成果よりも心を左右する」
愚かな人間関係は、日々の判断を曇らせ、信頼を崩し、時間と心の資源を奪っていきます。
一方で、心ある人との関係は、支えとなり、刺激となり、共に歩む喜びを与えてくれます。
ブッダのこの教えは、現代における「人との距離感の取り方」や「付き合う相手の選び方」を再考する上で、極めて実践的な知恵となるのです。
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