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“我”を手放したとき、宇宙とひとつになる


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■引用原文(日本語訳)

「我執、暴力、尊大さ、欲望、怒り、所有を捨て、『私のもの』という思いなく、寂静に達した人は、ブラフマンと一体化することができる。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第53節)


■逐語訳

  • **自己への執着(我執)**や、
  • 暴力・尊大さ・欲望・怒り・所有欲をすべて捨て去り、
  • 「これは私のものだ」という思いも手放し、
  • 深い内的な静けさ(寂静)に到達した人は、
  • 宇宙の根本実在であるブラフマンと一体化する(合一する)ことができる。

■用語解説

  • 我執(アハンカーラ):自我意識。「私が」「私の」と執着する心の根。
  • 暴力(ヒンサー):肉体的・精神的な他者への攻撃・支配。
  • 尊大さ(ダルパ):傲慢さ、優越意識。
  • 欲望・怒り・所有欲:執着を生む三毒。心を曇らせる感情。
  • 寂静(シャーンティ):心が完全に静まった状態。外と内の騒ぎが消えた境地。
  • ブラフマンと一体化(ブラフマブーヤーヤ・カルパテ):自己と宇宙(絶対実在)との合一、悟りの完成。

■全体の現代語訳(まとめ)

「私」という意識を捨て、暴力性や傲慢、欲望や怒り、所有欲を完全に手放し、
心の奥底まで静かになった者は、宇宙の根源と完全に一つになることができる。


■解釈と現代的意義

この節は、ギーターの最終的な教えの核心です。
悟り、解脱、真の自由とは、「我」を捨て、心を完全に静めることによって初めて可能となる――それを明言しています。

この教えは、現代の私たちにとっても深い意味を持ちます。
「これは自分の成果」「これは私の役職」「これは自分の功績」という思いにとらわれれば、
心は常に揺れ、怒り・欲・不満に支配されます。

しかし、その「私」を離れたとき、心は静まり、力を持つようになる
それが「自己を捨てることによる最高の自己完成」です。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点実務での適用例
エゴの手放し成果を「自分のもの」と固執せず、チームや組織のために動ける人が、最も信頼される。
怒りや欲望の制御感情に支配されずに冷静に対処できる人は、リーダーとしての器がある。
オーナーシップの本質所有や名誉に執着せず、目的のために尽くす姿勢が、最終的に評価される。
内的静けさ競争社会においても、自分の軸を失わずに静かに力を発揮できる人は、長期的に成功する。

■心得まとめ

「“私のもの”を手放したとき、真の自由と一致が始まる」

ギーターは語る――
傲慢も、怒りも、所有の意識も、
心を騒がせ、真理から遠ざける。
それらを捨てた者こそが、
この世界を超えて、宇宙とひとつになるのだ。


この第53節は、第50~52節で示された「行動・制御・環境」の修養の完成として、
**最終的な悟り(ブラフマンとの一体化)**の条件を明言するものであり、
次の節(第54節)からは、その一体化を果たした者の姿=「ブラフマ・ブータ」の状態が語られます。

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