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経営計画では何を計画するか

経営計画とは、企業運営において社長が示す基本方針や目標、そしてそれを実現するための具体的な手段を体系的にまとめたものを指します。

これには事業運営に必要なさまざまな活動要素が含まれ、それらを明示することが重要です。

目次

経営計画の本質:魂と仏

経営計画は「魂」と「仏」の両面で成り立っています。

「仏」は具体的な計画書やデータ、「魂」はそれを支える経営理念や目指す未来像です。

この二つが揃うことで、意義ある経営計画が完成します。しかし、多くの企業では「仏つくって魂入れず」の状態が見られ、計画に命が宿らない原因となっています。

魂の宿った経営計画の条件

魂を込めるには、社長自身の経営理念に基づいて企業の未来像を描き、それを現実化するための行動指針を明確に示すことが必要です。

だからこそ、方針書は経営計画における「絶対条件」となる。会社内のすべての思考や行動は、この方針書を基盤として展開され、その指針に従って実行されるものである。

これが経営計画の中心となる「方針書」であり、企業の全思想や行動を統括する基盤となります。

計画の構成要素

経営計画は以下の要素で構成されます。

  • 利益計画
  • 販売計画
  • 設備計画
  • 要員計画
  • 資金運用計画
  • 目標貸借対照表
  • 資金繰計画

利益計画

利益計画:企業が目指す利益目標を設定し、それを達成するための具体的な戦略を立てます。

まず最初に取り組むべきは「利益計画」である。我社がどれだけの利益を上げる必要があるのか、これがすべての計画の出発点となる。そして、その目標利益を達成するための具体的な活動を計画していく。

販売計画

販売計画:何を、どこに、どれだけ売るかを定める。これには、利益を生み出すための「何を、どれだけ、どこに売るか」を定めた「販売計画」が含まれる。

設備計画

設備計画:目標達成に必要な内部条件を整備する。その上で、この売上を達成するための内部条件として、「設備計画」と「要員計画」が必要となる。これらが利益を確実に実現するための基盤となるのである。

要員計画

要員計画:目標達成に必要な内部条件を整備する。

販売計画、設備計画、要員計画の三つの計画は、利益計画を達成するために必要な具体的条件を構成する要素である。この三者が相互に連携し、計画全体を支える基盤となる。

資金運用計画

資金運用計画:資金の管理基盤を築くための計画です。次に取り組むべきは、それらの活動を遂行するために必要な「資金」の計画である。これがいわゆる「資金運用計画」であり、計画全体を実現するための財務的な基盤を確立する役割を果たす。

資金運用計画に関連する計画として、長期的には「資金調達計画」があり、短期的には「運転資金計画」が存在する。

長期的な資金調達計画

短期的な運転資金計画

目標貸借対照表

目標貸借対照表:利益計画と資金運用計画を統合し、財務状況を計画的に示します。これが経営計画の「総仕上げ」となります。

これらの計画を基に、次に取り組むのは、利益計画と資金運用計画を統合し、「目標貸借対照表」を作成することである。この目標貸借対照表は、企業の財務状態を計画的に示し、経営の全体像を具体的に描き出す役割を果たす。

この目標貸借対照表こそ、経営計画の「総仕上げ」といえる。「我社はこのような利益を達成し、このように資金を運用し、その結果として、このような財務状況を実現する」という全体像を示すものであり、経営計画の結論を具体的かつ明確に表現するものとなる。

経営計画は、利益計画と資金計画という二つの関係性を明確にすることで、初めて完成度の高いものとなる。しかし、これら二つの関係を十分に解明し、統合的に示した経営計画は、実際にはほとんど存在していないといえる。

私がこれを社長に説明しながら、その意味や具体的な進め方を示しつつ一緒に作り上げていくと、「資金運用とはこういうことだったのか」「なるほど、バランス・シートの意味がやっと理解できた」といった感想が聞かれることが多い。

この目標貸借対照表を基に「財務分析」を行う。これは、「我社の第××期の財務比率を、このような状態に導く」という具体的な目標を設定し、その達成に向けた指針を明らかにする作業である。

資金繰計画

資金繰計画:月次の現金収支を具体化し、事業運営の実行可能性を確認します。この計画は利益計画や資金運用計画との連動性が高く、一貫性を持って運用可能です。

計画の実効性を高めるために

資金運用と資金繰りは経営計画の重要な柱です。

  • 資金運用:期末時点での資金構造を計画的に整えること。
  • 資金繰り:時系列で資金の流れを管理し、運営の流動性を確保すること。

これら二つを統合的に管理することで、資金計画の精度と効率を高めることができます。

計画の柔軟性と焦点

経営計画は企業の基盤となる要素を中心に構成しますが、特殊な事情や重点施策がある場合には、それらを柔軟に取り入れることも可能です。ただし、過剰な細部計画を盛り込むと焦点がぼやけ、計画全体の効果が薄れるリスクがあります。核心部分を明確にし、補完要素として必要な部分を追加する形が理想です。

未来志向の経営

経営は未来を切り拓く行動です。過去を振り返るだけでは進歩はありません。未来を見据え、前向きな数字を基に計画を作成することが、社長の不安を解消し、企業の成長を支える鍵となります。未来志向の経営計画を通じて、明確な方向性と具体的な指針を示し、企業を持続的に成長させましょう。

バランス・シートと財務分析は、このように未来を見据えて前向きに設定し、それを基に分析・検討することが本来の姿である。過去のバランス・シートをいくら詳しく分析したところで、それは「後の祭り」にすぎない。過去に現れた数字を変えることは不可能であり、そこから得られる教訓を将来に生かすことこそが重要なのである。

事業経営において、「過去にこうであった」と振り返るだけでは何も解決しない。必要なのは、前を向き、「我社の事業の将来をこうしていく」という明確な方向性と意思を持つことである。経営とは未来を切り拓く行動であり、過去を語るだけでは進歩はない。

事業経営を前向きに進めるべきにもかかわらず、前向きの数字が存在せず、過去の数字にとらわれて後ろ向きになっているのでは、前進することは不可能だ。後ろ向きの数字だけを見ていては、「将来どうするか」も「将来どうなるか」も見えてこない。「不安で仕方がない」と感じるのは当然の結果である。不安とは未来を見据える中で生じる感情であり、過去の出来事を心配する人間などいるはずがないのだ。

社長の不安を取り除く鍵となるのは、前向きの数字である。その前向きの数字を集約し、具体的な形として示したものが、未来志向のバランス・シートである。このバランス・シートは、将来の姿を見通し、経営の方向性を明確にするための指針となる。

次に、利益計画と資金運用計画を統合し、それを月別に具体的に展開する作業を行う。これが「資金繰計画」である。すなわち、利益計画と資金運用計画を基に、月々の現金収支を明確に示したものが資金繰計画であり、事業運営の実行可能性を支える重要な計画となる。

資金繰計画を持っている企業はほとんどなく、多くの会社で見られるのは「資金繰予測表」である。この資金繰予測表とは、資金担当者が自身の業務上の必要性から、自らの予測に基づいて作成したものであり、あくまで担当者の見解に依存したものに過ぎない。そのため、資金繰予測表は利益計画や資金運用計画との連動性がなく、全体的な経営計画の中での位置づけが曖昧である。結果として、毎月新しい予測に基づいて資金繰予測表を作り直すという非効率が生じている。

一方で、資金繰計画は、利益計画または資金運用計画のいずれか、あるいは両方に変更がない限り、基本的に修正する必要がない。この計画は、それらの計画と密接に連携しているため、一貫性を持ちながら長期的に運用できるのが特徴である。資金繰予測表のように毎月作り直す手間が不要であり、経営の安定性と効率性を高める役割を果たす。

このような主張に対して、資金担当者は疑問を抱くこともあるだろう。それは、計画と実績が必ずしも一致するものではないため、その差を修正しなければ資金繰表としての実用性がないのではないか、という懸念である。

一見もっともな意見のように思えるが、これは「計画どおり病」の一種に過ぎない。資金繰計画の本来の目的は、計画と実績をぴったり一致させることではない。重要なのは、資金繰りの実態を明らかにし、必要な資金を確保するための正しい対策を導き出すことである。計画のズレを恐れるのではなく、それを前提として対応策を講じることが資金繰計画の真の役割である。

資金繰計画の目的は、計画と実績が一致しなければ達成できないというものではない。むしろ、資金繰計画と実績との間に生じる差を読み取り、それをもとに適切な対応策を導き出すことで達成可能である。(この点については「資金繰計画」の章で詳述する予定である。)

一方で、資金繰予測表の場合、予測と実績が食い違った場合に、そのままの状態では正しい対応策を見つけ出すことは、完全に不可能ではないものの非常に困難である。その結果、予測表を書き直さざるを得ない状況が生じ、これが非効率を生む原因となるのである。

以上の点が、資金繰計画と資金繰予測表の本質的な違いである。したがって、社長が経営判断や意思決定のために必要とするのは、単なる資金繰予測表ではなく、長期的な視野と一貫性を持つ資金繰計画表でなければならない。資金繰計画表こそが、経営を前進させるための信頼できる指針となる。

資金運用と資金繰りは、どちらも資金に関するものであるが、その内容と目的には明確な違いがある。資金繰りとは、「暦日による資金収支」を指し、資金の流れを時系列で追うものだ。たとえば、月次資金繰りは毎月の資金収支を意味し、当月資金繰りであればその月の毎日の資金収支を表す。要するに、資金繰りは「資金の時系列」による動きを管理するものであり、資金のタイミングや流動性に焦点を当てている。

資金運用とは、「期末における資金構造」を指すものである。期末時点で目指すべき資金の構成を設定し、それに向けて資金を適切に管理・運用するという意味を持つ。言い換えれば、資金運用は「期末断面の資金構造」を計画的に作り上げるための活動であり、資金繰りのような時系列管理とは異なり、静的な視点で資金全体のバランスを整えることに重点を置いている。

資金の管理において重要なのは、期中における収支を計画する資金繰りと、期末断面の資金構造を計画する資金運用の両方を整備することである。この二つを計画的に管理してこそ、資金に関する誤りを最小限に抑えることができる。この考え方は、決算書において期間の収益性を示す損益計算書と、期末の財務状況を示す貸借対照表の両方が必要とされるのと全く同じ原理に基づいている。

以上、何を計画すべきかについての「計画事項」と、それに関連するいくつかの説明を述べてきた。これらの事項は、経営計画における「必須事項」であり、経営の根幹を成す要素である。そして、これら以外に加えるべき事項はほとんど存在せず、これだけで十分に実効性のある経営計画を構築することができる。

もちろん、会社ごとに異なる特殊事情や重点施策が存在する。そのため、経営計画にどうしても盛り込みたい事項がある場合には、柔軟にそれを含めることに何ら問題はない。それらの追加事項は、会社独自の戦略や状況を反映させ、計画をさらに実践的で具体的なものとする補完要素となり得る。

ただし、経営の基本事項に該当しない部分計画や細部計画は、経営計画に盛り込むべきではない。これらを過剰に含めると、計画の焦点がぼやけてしまい、本来重要な事項が埋もれてしまう可能性がある。経営計画は、核心となる方針と目標を明確に示すことが重要であり、細部は必要に応じて補完的に扱うべきである。

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