経営者について定義していきます。
経営者とは
経営をしていくにあたって「経営者とはどういう存在か」ということを明確に定義する必要があります。
経営者とは、一言でいえば「成果をあげる人」です。これが経営者の定義です。
経営者は成果をあげる人であり、その会社に所属する従業員は経営計画のアクションを実行する人です。
「経営者=成果を上げる人」です。
つまり、経営者に求められているのは、「成果をあげること」。これに尽きます。
成果とは
成果とは、「約束したこと」です。経営者は、約束を守らなければいけません。約束を果たすことが信頼につながります。
経営者が、顧客、社会、株式市場、従業員に対して、「こうなります」「こうします」「これをやります」と宣言をして約束したこと。これを実行して、実現する。これが成果をあげるということです。
成果の種類
成果というと、業績のみにフォーカスされますが、業績の数値だけではありません。「業績数値も」入ってきますが、「それ以外も」入ってきます。
大きく分けて3つの約束があります。
- 業績数値の約束
- 定量的な約束
- 定性的な約束
業績数値の約束
例えば、「年率二〇パーセントの成長を続けながら経常利益率二〇パーセントを達成し続ける」というのは業績数値の約束です。
年率20%の成長は、売上が1億円だったら、1.2億円、経常利益率20%は1億円なら2000万円、1.2億円なら、2400万円。
経常利益は、一般管理費(人件費などの経費)を引いた利益。つまり、粗利益率は75%ぐらいに設定しない限り達成し得ない利益率。
粗利を上げるのはビジネルモデルで決定する。粗利が高いほど参入障壁が高く競合他社が少なく市場の利益を分け合う必要がないということになります。
定量的な約束
「世界中どこでも経営ができる人材を三百名作る」というのは業績ではない、定量的な約束です。
定性的な約束
また、「上海、シンガポール、ニューヨーク、パリに経営拠点を作る」ですとか、「今までにない新しい価値を持つ服を創造する」というのは、定性的な約束です。
経営者の役割
経営者というのは、このように、やると宣言したことを実現することに固執し、それを何としてでもやり遂げるようにする。それが経営者の役割です。
そうやって約束したことを成果としてあげてはじめて、顧客、社会、株式市場、従業員から信頼されて、会社は存在し続けることができるのです。
そして、このような、自分たちがやると約束する成果を考えるにあたって、一番大切なことは、社会における自分たちの存在意義、つまり使命を考えることです。そもそも何のために会社をやっているのか、それをよく考えるということです。
使命
使命とは、「命を使う」という意味です。何のために命を使うか。これがなければ会社の存在意味はなくなります。
会社は社会の役に立ってはじめて存在が許されます。だとしたら、自分たちはどういうことを通じて、社会に貢献するのか。これをよく考えるということです。
例えば、ファーストリテイリングは、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というステートメントに集約された「使命感」を掲げられています。
この使命感にゴールはありません。指名は、永久にゴールに到達することはないのですが、ゴールを目指して追いかけます。それが正しい会社の姿です。それが正しい経営者の行動です。
永久に完成しないけれど、それに近づくために、五年後にはこうなる、来年にはこうなる、今年はこうなる。こうなるために、今からこれをやる、今年はこれをやる。来月、来週、今日はこれをやると約束をする。そうやって約束したことを実現する。
それが成果ですから、約束する成果というものは、使命の実現に一歩近づくものでなければいけないということです。
会社の使命と成果が結びついていること。それが経営の原則です。
確かに会社は儲けることが大切です。経営者は慈善事業をやっているわけではないし、評論家をやっているわけでもなく、商売をやっているのですから、商売人としてしっかり儲けないと経営者としては失格です。「儲ける力ー経営者は商売人であれ―」で記載します。
しかし、これだけは絶対に誤解してほしくないのでしっかりと理解してほしいのですが、私は「儲ければいい」ということを言っているわけではありません。
「儲けることが大切」と「儲ければいい」は全く意味が異なります。「儲ければいい」という考え方は、「何をやってもいい」という考え方と「結果オーライでもいい」という考え方に通じます。
そうやって儲けている人を、「経営者」とは呼びません。厳しい言葉で言うと、「モラルのない商売人」です。
経営者にとっての「正しい儲ける姿」とは、「約束したことを成果として実現させたうえで、儲けている」という姿です。
約束したことが実現できていないのに、儲けがあがっているとしたら、経営者としての仕事はできていないと思わないといけません。
やるべきことをやったうえでの儲けではないので、儲けても意味がありません。結果オーライで、それで喜んでいたら、その会社の経営は長続きしないでしょう。
例えば、「今までにない新しい価値を持つ服を創造する」と言っているのに、今シーズン何もその約束を果たすような商品ができておらず、それなのに売上があがっていたとしたら、これは単に気候が影響しただけかもしれません。
気候は我々がコントロールできないものです。それなのに、結果オーライだったからよかったと喜んでいる会社になっていたら、あっという間にお客様から見放される会社になっていく姿が目に浮かびませんか。
正しい儲け方をしないと企業は長続きしないのです。ただ足もとで儲かっていればいいというのは正しい経営者の姿ではないと思ってほしいです。
現パナソニックの創業者の松下幸之助さんは、「水道哲学」という言葉で、自分たちの会社の使命を説きました。それは「水道から流れる水のように、廉価(一般の人が手に届く価格)で大量に物資を供給することで、人々を幸福にする」という内容です。松下幸之助さんは水道哲学を実現することで、結果として会社を大きく成長させました。
本田技研工業の創業者の本田宗一郎さんは、「世界一の二輪車メーカーになる」とか「Flレースに参戦して優勝する」などの宣言をして、それを実現することで、町工場だったホンダを世界に通用する会社に育てあげました。
二人がなぜ、いつまでも経営者として、あらゆる人から尊敬され続けるのか。
それはやはり彼らは使命感を持ち、その使命の実現に近づく道程として、その時その時の、目指すべき姿、やるべきことを約束として宣言し、それを成果として実現させてきたから。そして、その実現を通じて、実際に社会に役に立つ企業を作ったからに他なりません。
正しい経営者の姿とは、あるいは経営者の果たすべき役割とは、こういうことだと思います。これから経営者になる人は、このことをまずしっかりと心得てほしいと思います。
まとめ
- 「経営者」=「成果を上げる人」。「経営者の仕事」は「成果をあげること。」
- 「成果」は約束したこと。「業績数値の約束」と「定量的な約束」、「定性的な約束」がある。
- 経営者の役割は、やること決めたことを実現することに固執し、それをなんとしてもやり遂げようにする。
- 約束する成果を考えるにあたって、一番大切なことは、社会における自分達の存在意義、つまり使命を考えること。
- 会社は社会の役にたってはじめて存在が許される。自分達はどういうことを通じて、社会に貢献するか。
- 使命感にゴールはない。
- 経営の原則は、会社の使命と成果が結びついていること。
- 商売をやっているから、商売人としてしっかり儲けないと経営者としては失格。ただし儲ければいいということではない。
- 経営者にとっての「正しい儲ける姿」とは、「約束したことを成果として実現させたうえで、儲けている」という姿
- 使命感を持ち、その使命の実現に近づく道程として、その時その時の、目指すべき姿、やるべきことを約束として宣言し、それを成果として実現させてきた
- その実現を通じて、実際に社会に役に立つ企業を作ったから
ワーク
- 自分・会社の使命は何かを考えましょう。ビジョンに書き込みましょう。
- 全社、事業別毎に、「業績数値の約束」・「定量的な約束」・「定性的な約束」を設定しましょう。
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