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若者の交友は、その一生を左右する

若者を育て導くことは、ちょうど箱入り娘を大切に育てるようなものである。
日々の出入りをしっかり見守り、誰と交友を持つかに細心の注意を払う必要がある。
もしこの配慮を怠り、一度でもふさわしくない人物と深く関わってしまったなら、
それは、清らかな田に不浄な種をまいてしまうようなものだ。
そうなれば、いかに優れた種を後から植えようとしても、
雑草がはびこり、良い実りは望みにくくなる。
つまり、人生の初期に交わる人間関係が、その人の将来を大きく左右するのである。
だからこそ、若い時ほど「誰と付き合うか」を最も大切にしなければならない。


「弟子(でし)を教(おし)うるは、閨女(けいじょ)を養(やしな)うが如(ごと)し。
最(もっと)も出入(しゅつにゅう)を厳(げん)にし、交遊(こうゆう)を謹(つつし)むを要(よう)す。
若(も)し一(ひと)たび匪人(ひじん)に接近(せっきん)せば、
是(こ)れ清浄(せいじょう)の田中(でんちゅう)に一(いち)の不浄(ふじょう)の種子(しゅし)を下(くだ)すなり。
便(すなわ)ち終身(しゅうしん)、嘉禾(かか)を植(う)え難(がた)し。」


注釈:

  • 閨女(けいじょ)…慎重に育てられる娘、いわゆる「箱入り娘」のたとえ。
  • 匪人(ひじん)…行いの正しくない者。ふさわしくない交友相手。
  • 嘉禾(かか)…実のなるよい穀物の苗。ここでは「すばらしい人間性」や「徳の実り」の象徴。
  • 清浄の田に不浄の種子を下す…純粋な心に悪影響を与える種をまくこと。悪習・悪友の影響を受けることの危険性。
目次

1. 原文

教弟子如養閨女。最宜嚴出入、謹交遊。
若一接匪人、是清淨田中下一不淨種子。終身難植嘉禾矣。


2. 書き下し文

弟子を教うるは、閨女を養うが如し。最も出入りを厳にし、交遊を慎むを宜しとす。
もし一たび匪人に接近せば、これは清らかな田に不浄の種子をまくようなもの。
ゆえに、終身にわたり良き稲(嘉禾)を植えることが難しくなるのである。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「弟子を教うるは、閨女を養うが如し」
     → 弟子を教育することは、箱入り娘を育てるように慎重にすべきである。
  • 「最も出入りを厳にし、交遊を慎むを宜しとす」
     → 特に出入りの自由を厳しく管理し、交友関係を慎重に選ぶ必要がある。
  • 「もし一たび匪人に接近せば、これは清らかな田に不浄の種子をまくようなもの」
     → もし一度でも不良な人間と関わってしまえば、清らかな心の中に汚れた種が植えられるようなものである。
  • 「ゆえに、終身にわたり良き稲(嘉禾)を植えることが難しくなるのである」
     → 一度でも悪影響を受ければ、人生を通じて善良な人格を育てるのは難しくなる。

4. 用語解説

  • 閨女(けいじょ):奥深くに住む令嬢、未婚の若い女性。ここでは「慎重に育てるべき存在」の比喩。
  • 匪人(ひじん):ならず者、道を外れた者、品性の悪い人間。
  • 清浄田(せいじょうでん):清らかな田畑。ここでは、純粋な心・素直な教育環境を意味する。
  • 不淨種子(ふじょうのしゅし):汚れた種=悪い影響、悪徳、悪習。
  • 嘉禾(かか):良い稲穂。人格や徳の象徴。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

弟子を教育するというのは、奥ゆかしく大切に娘を育てるようなものだ。
だからこそ、日々の行動や付き合いは細かく注意し、厳しく見守る必要がある。
一度でも悪い人物と関わってしまえば、純粋な心に悪しき影響が染み込んでしまい、
その後の人生で善き人格を育てることは非常に難しくなるのだ。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**教育における「環境の選択」と「交友の影響力」**の重大さを説いています。

人間の心は柔らかい畑のようなもので、特に若いうちはどんな種がまかれるかによって将来が決まります。
だからこそ、早期教育の段階では人格に良い影響を与える環境と人間関係の管理が非常に重要です。

また、一度悪い種(影響)が入り込めば、あとからどれだけ良い教育をしても取り返しがつかないこともある──この言葉は、教育に携わる者すべてへの戒めです。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 新人教育=「心の畑」に種を蒔く行為

新人社員や若手の育成は、知識だけでなく誰と接するか・何を見せるかが極めて重要です。
早期にネガティブな習慣や感情を植え込むと、それがその人の行動原理になりかねません。

● 交友・影響力の管理=企業文化の鍵

たとえ1人の「匪人」(不正・自己中心・攻撃的)な人材が組織内にいたとしても、
その影響は周囲の清らかな風土を壊しかねません。採用・配属・指導役の選定には細心の注意が必要です。

● 指導者は「厳しく、かつ丁寧に育てる」覚悟を持つ

信頼しすぎて放任したり、「自分で学べ」と丸投げしたりするのではなく、
“接触”や“交友”の質に細やかに目配りをしながら、環境そのものを整えて育てることが理想です。


8. ビジネス用の心得タイトル

「一粒の種が未来を変える──教育は“接触”を慎むことから始まる」


この章句は、教育や人材育成における**“環境と人間関係の影響力”の絶大さ**を教えてくれる実践的な名言です。


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