心が広く、あたたかく、寛厚な人は、春の風のように万物をやさしく包み、自然と命を育てていく。
そのような人のもとでは、人も物も、生き生きと成長してゆくものだ。
一方で、心が狭く、冷たく、残忍な人は、北風に吹かれ雪に閉ざされた大地のように、すべてを凍らせてしまう。
そのような人のもとでは、命も芽を出さず、成長も枯れてしまう。
つまり、人が持つ「気」は、ただ自分の内面にとどまらず、まわりにも大きな影響を与えている。
あたたかな人は、周囲の人や環境までも育てる存在となるのだ。
原文（ふりがな付き）
「念頭（ねんとう）の寛厚（かんこう）なる的（もの）は、
春風（しゅんぷう）の煦育（くいく）するが如（ごと）く、
万物（ばんぶつ）之（これ）に遭（あ）いて生（しょう）ず。
念頭（ねんとう）の忌刻（きこく）なる的（もの）は、
朔雪（さくせつ）の陰凝（いんぎょう）するが如（ごと）く、
万物（ばんぶつ）之（これ）に遭（あ）いて死（し）す。」
注釈
- 寛厚（かんこう）：心が広く、情け深いこと。
- 煦育（くいく）：春風のようにあたたかく、すべてを育てること。
- 忌刻（きこく）：冷酷で厳しすぎる性質。人情に欠けた態度。
- 朔雪（さくせつ）：北風と雪。冷たく生命を拒む象徴。
- 陰凝（いんぎょう）：陰気が凝り固まり、凍てつくこと。成長や変化を阻害する状態。
パーマリンク候補（英語スラッグ）
warmth-nurtures-growth（温かさが成長を育む）cold-hearts-stunt-life（冷たい心は命を枯らす）be-the-spring-wind（春風のような人であれ）
この条は、リーダーシップや人間関係、教育、家庭など、あらゆる場面に通じる教えです。心がそのまま環境をつくり、雰囲気を生み、人の運命すら左右することを、静かに、しかし強く伝えてくれます。
1. 原文
念頭寬厚者、如春風煦育、萬物之而生。
念頭忌刻者、如朔雪隱凝、萬物之而死。
2. 書き下し文
念頭（ねんとう）の寛厚（かんこう）なる者は、春風（しゅんぷう）の煦育（くいく）するが如（ごと）く、万物（ばんぶつ）之（これ）に遭（あ）いて生（しょう）ず。
念頭の忌刻（きこく）なる者は、朔雪（さくせつ）の隠凝（いんぎょう）するが如く、万物之に遭いて死（し）す。
3. 現代語訳（逐語訳／一文ずつ訳）
- 「念頭の寛厚なる者は、春風の煦育するが如く、万物之に遭いて生ず」
→ 心が寛大で温かい人は、春の風が万物を育てるように、周囲の人々や事柄に生命力を与える存在となる。 - 「念頭の忌刻なる者は、朔雪の隠凝するが如く、万物之に遭いて死す」
→ 心が冷たく厳しすぎる人は、冬の北風がすべてを凍えさせるように、周囲の活気や希望を奪ってしまう。
4. 用語解説
- 念頭（ねんとう）：心のあり方、思考の出発点、根底にある気持ち。
- 寛厚（かんこう）：おおらかで優しく、他人に対して思いやりのある性質。
- 煦育（くいく）：春の暖かい風が草木を育てるように、包み育てること。
- 忌刻（きこく）：厳しすぎて寛容さに欠ける性格。狭量で冷酷な心。
- 朔雪（さくせつ）：冬の厳しい北風と雪。冷たい季節の象徴。
- 隠凝（いんぎょう）：冷えて凝り固まること。停滞・閉塞の象徴。
5. 全体の現代語訳（まとめ）
心が寛大であたたかい人は、まるで春風のように、出会う人や物事に命を与え、成長を促す。
一方、心が冷たく厳しい人は、北風と雪のように、出会う人や環境を凍りつかせ、活力を奪ってしまう。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、「人間の心のあり方が周囲に与える影響力」を春と冬になぞらえて説いています。
- 寛厚な心は周囲を育てる力を持つ。
- 忌刻な心は周囲の成長を止め、衰退させてしまう。
人は言葉や行動だけでなく、**「心の空気感」によって、周囲に無意識の影響を与えています。リーダー、親、教師など、人に関わる立場にある人ほど、この「心の温度」**を大切にすべきです。
7. ビジネスにおける解釈と適用（個別解説付き）
●「温かいリーダーが、チームを育てる」
- 部下のミスに対して寛容で、失敗を責めるより成長の機会ととらえるリーダーは、チーム全体に安心感と活力をもたらす。
- 「春風煦育」の心が、メンバーの主体性や創造力を引き出す。
●「冷たい管理は、創造も信頼も凍らせる」
- 厳しすぎる評価制度や、常に疑いの目を向ける管理スタイルは、社員の挑戦意欲を冷却し、消極性と依存を生む。
- 「朔雪隠凝」のようなマネジメントは、短期的には秩序を保っても、長期的には人も組織も衰退させる。
●「心のあり方が職場の雰囲気を決める」
- 上司やリーダーが不機嫌、攻撃的、冷淡であれば、職場全体にその雰囲気が伝播する。
- 逆に、笑顔・共感・肯定がベースにある職場は、自然とモチベーションが高まり、成果に結びつく。
8. ビジネス用の心得タイトル
「心に春風を宿せ──育てる者は温かさで周囲を動かす」
この章句は、**「心の気候が人と組織の運命を左右する」**という真理を、自然のメタファー（春と冬）で鮮やかに描き出しています。
テクニックや仕組み以前に、人間の根底にある“念頭”の温度がすべてを決める。
あなたの心が春風であれば、自然と周囲も芽吹き、育ち、実るのです。
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