孔子は、「仁(じん)」――つまり人としての最高の徳・人格は、決して遠い理想ではないと語った。
「仁は遠くにあるものだろうか? 私が仁を欲すれば、そのときにはもう仁は自分の中にある」と。
つまり、本気で“よき人間でありたい”と願う心があれば、その瞬間から人としての道は始まっているということ。
仁は天賦の才能や特別な学問を要するものではなく、日々の選択と意志によって誰もが手にできる徳である。
孔子のこの言葉は、理想の人間像を「努力と意志によって届くもの」として、私たちに希望を与えてくれる。
原文・ふりがな付き引用
子(し)曰(い)わく、仁(じん)、遠(とお)からんや。我(われ)仁(じん)を欲(ほっ)すれば、斯(ここ)に仁(じん)至(いた)る。
注釈
- 仁(じん) … 思いやり、誠実、道徳的完成などを含む、儒家思想における最上の人格徳。
- 遠からんや … そんなに遠くにあるのだろうか?(いや、近くにあるはずだ)という反語的表現。
- 仁を欲すれば … よき人間でありたいと本気で願うこと。
- 斯に仁至る … その時すでに仁は自分のもとにある。意志と行動が一致している状態。
1. 原文
子曰、仁遠乎哉、我欲仁、斯仁至矣。
2. 書き下し文
子(し)曰(い)わく、仁(じん)、遠(とお)からんや。
我(われ)仁を欲(ほっ)すれば、斯(すなわ)ち仁至(いた)る。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)
- 「仁、遠からんや」
→ 仁(人としての最高の徳)は、そんなに遠いものだろうか。 - 「我仁を欲すれば、斯に仁至る」
→ 私が仁を心から望み求めれば、その時にはもう仁は自分の中に実現しているのだ。
4. 用語解説
- 仁(じん):孔子が最も重んじた徳。思いやり・他者への配慮・愛・誠実さなどを含む、人格の中心的価値。
- 遠からんや(とおからんや):遠いだろうか、いや近いという反語表現。
- 斯(すなわ)ち~至る:まさにその時に~が到来する、達成される。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言いました:
「仁とは、そんなに遠いものだろうか?
私がそれを本気で望めば、その時にはすでに仁は自分の中にあるのだ。」
6. 解釈と現代的意義
この章句は、孔子の**「徳(仁)は努力や才能で遠くにあるものではなく、“志”によって手に届く」**という信念を表しています。
- 仁は、難解な理論や長年の修行を経ないと手に入らないものではない。
- “真に望み、求めた時点で、すでに仁は始まっている”──孔子の人間観の核心。
- これは、「徳とは到達点ではなく、志す心と一致する瞬間に生まれる」という内発的倫理観です。
7. ビジネスにおける解釈と適用
■「理想の人格は、志すことから始まる」
──リーダーシップや信頼性は、まず“なりたい自分”を本気で思い描くことから始まる。
■「誠意とは、意志の瞬間に生まれる力」
──信頼される人は、特別な能力の持ち主ではなく、“正しくありたい”という姿勢を行動で示す人。
■「行動変革は“志す”瞬間に始まっている」
──自己成長も価値創造も、まず「そうありたい」と本気で思うところから始まる。志=行動の起点。
■「道徳は遠くない、“選択”の中にある」
──毎日の小さな意思決定の中で、“仁に向かう選択”を積み重ねることが、人格をつくる。
8. ビジネス用心得タイトル
「志せば、すでに仁に至る──“ありたい姿”が人格を形づくる」
この章句は、リーダーの人格形成、若手社員の自己啓発、倫理教育、行動指針設計など、
“今この瞬間から始められる徳”としての仁の考え方を力強く伝えています。
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