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正しき道を信じ、命をかけて貫く

― 道があるかないかで、自らの在り方を決めよ

孔子は、学びを深く信じ、その学びから得た**「道(みち)」=人生の正しき指針**を貫く姿勢を語った。

信念をもって学びに励み、得た道を命をかけて守る覚悟を持つべきである。
混乱しようとする国には入らず、すでに乱れてしまった国には留まらない。
世に道(正義・倫理・理想)があれば、積極的に姿を見せて働き、
道が行われていなければ、隠れて時を待ち、学び続ける。

そして孔子は、次のように断言する――

  • 道が行われている国にいて、貧しく地位もないなら、それは恥である。
  • 道が行われていない国で、富み地位を得ているなら、それもまた恥である。

つまり、自分の地位や富は「道」の上に成り立っているかどうかで評価されるべきだという強い倫理観が語られている。


原文と読み下し

子(し)曰(のたま)わく、篤(あつ)く信(しん)じて学(がく)を好(この)み、死(し)を守(まも)りて道(みち)を善(よ)くす。危邦(きほう)には入(い)らず、乱邦(らんぽう)には居(お)らず。天下(てんか)道(みち)有(あ)れば則(すなわ)ち見(あら)われ、道無(な)ければ則ち隠(かく)る。邦(くに)に道有りて、貧(まず)しくして且(か)つ賤(いや)しきは恥(はじ)なり。邦に道無くして、富(と)みて且つ貴(たっと)きは恥なり。


注釈

  • 篤信(とくしん)好学(こうがく):深く信じて学ぶことに熱心である。知識ではなく、生き方としての学問を目指す姿勢。
  • 守死善道(しをまもりてみちをよくす):「命をかけて道を守る」という決意の表れ。
  • 危邦(きほう):これから乱れそうな国・組織・社会。
  • 乱邦(らんぽう):すでに秩序が崩壊した国・組織。
  • 見(あらわ)る:社会に出て貢献する。公の場に立つ意。
  • 隠る(かくる):世に出ず、退いて学びに専念する。
  • 道ありて貧且賤(まずしくいやし)きは恥なり:道があるところでは、努力が正当に報われてこそ。報われないなら、何か努力不足や志の未熟さがあることを反省すべきという意味。
  • 道なくして富且貴(とみたっと)きは恥なり:道が通らぬところで栄えるのは、不義や不徳によるもの。恥ずべきである。

原文:

子曰、篤信好學、守死善道、危邦不入、亂邦不居、天下有道則見、無道則隱、邦有道、貧且賤焉、恥也、邦無道、富且貴焉、恥也。


書き下し文:

子(し)曰(いわ)く、篤(あつ)く信(しん)じて学(がく)を好(この)み、死(し)を守(まも)りて道(みち)を善(よ)くす。
危(あや)うき邦(くに)には入(い)らず、乱(みだ)るる邦には居(お)らず。
天下に道(みち)有(あ)れば則(すなわ)ち見(あら)われ、道無(な)ければ則ち隠(かく)る。
邦に道有りて、貧(まず)しくして且(か)つ賤(いや)しきは恥(は)じなり。
邦に道無くして、富(と)みて且つ貴(たっと)きは、恥なり。


現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  • 「篤く信じて学を好み、死を守りて道を善くす」
     → 深く信念を持ち、学問を好み、命をかけて道(道徳)を守り、正しく実践する。
  • 「危邦には入らず、乱邦には居らず」
     → 危険な国家には仕えず、混乱した国にはとどまらない。
  • 「天下に道有れば則ち見れ、道無ければ則ち隠る」
     → 天下に道(正義・倫理)があれば公に仕え、なければ身を隠す(距離を置く)。
  • 「邦に道有りて貧にして且つ賤しきは恥なり」
     → 正しい社会で貧しく低い地位に甘んじるのは、自ら努力していない証であり恥である。
  • 「邦に道無くして富みて且つ貴きは恥なり」
     → 不正がはびこる社会で富や地位を得ているなら、それは恥ずべきことである。

用語解説:

  • 篤信(とくしん):深く信じること。信念の厚さ。
  • 守死(しゅし):命をかけて守ること。
  • 危邦・乱邦(きほう・らんぽう):政治が不安定または無道に陥っている国家・組織。
  • 道(みち):倫理・道徳・正義・天の理。
  • 見(あらわれる)・隠(かくる):公に出仕する/身を引いて静かに暮らすこと。
  • 貧且賤(ひんかつせん):経済的に貧しく、社会的地位も低いこと。
  • 富且貴(ふかつき):経済的に豊かで、かつ地位が高いこと。

全体の現代語訳(まとめ):

孔子はこう言った:

「信念をもって学びを好み、命をかけて道(倫理)を守り、正しく行動せよ。
危うい国には関わらず、乱れた国には住んではならない。
社会に道があれば進み出て、なければ身を引くべきだ。
正しい世の中で貧しく地位が低いのは恥ずかしい。
逆に、不正な世の中で富や地位を得ているのもまた恥である。」


解釈と現代的意義:

この章句は、信念に基づく生き方・職業倫理・社会との関わり方を孔子が明確に示したものです。

  • 「どんな時代・社会でも、道義に基づいて行動すること
  • 「道なき世では身を引き、出世や利益を求めぬ節義ある姿勢
  • 「逆に、正しい社会で努力せず貧しいままならである」

つまり、その人の「あり方」は社会状況×行動の選択によって判断されるという孔子の厳格な道徳観が表れています。


ビジネスにおける解釈と適用:

1. 「信念を守り抜くことが人の価値を決める」

  • 難局でもぶれない“道”を持つ人材が、長期的に信頼される。
  • 成功や利益よりも「正しいと信じることを守る」姿勢が人格を示す。

2. 「環境によって行動を変える柔軟性と節度」

  • 組織文化が腐敗しているなら距離を取り、正しい場でこそ力を発揮すべき。
  • 自分が出ていくべきとき/一歩引くべきときを判断できるのが大人の知性。

3. 「“正しい場”で成果を出すことに価値がある」

  • 健全な組織で努力せず評価されないのは恥。
  • 不健全な場で出世しても、それは誇るべきものではない。

ビジネス用心得タイトル:

「道なき富は恥、道ある努力に誇りを──信念と節義が人を磨く」


この章句は、現代でいえば**「自分の信じる正義に基づきキャリアを選べ」「不正な環境で得る成功を誇るな」**という極めて現代的な教訓です。

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