予定賃率を使用することで、直接工の賃金計算を効率化し、実際賃率の変動による影響を抑えることができます。しかし、予定賃率と実際賃率の差異が発生するため、月末や会計年度末に調整が必要です。
目次
1. 予定賃率を用いた賃金消費額の計算
計算式
予定消費額=予定賃率×実際作業時間
例題
- 予定賃率: @10円
- 実際作業時間: 80時間(すべて直接作業分)
計算
予定消費額=10×80=800 円
仕訳
借方: 仕掛品 800円(直接労務費)
貸方: 賃金 800円
2. 月末の処理
予定賃率で計算された予定消費額と実際消費額との差額を賃率差異として処理します。
ケース①: 実際消費額が 880 円の場合
- 実際消費額: 880円
- 予定消費額: 800円
- 差異: 880−800 = 80 円(不利差異)
仕訳
借方: 賃率差異 80円(不利差異)
貸方: 賃金 80円
ケース②: 実際消費額が 640 円の場合
- 実際消費額: 640円
- 予定消費額: 800円
- 差異: 800−640=160 円(有利差異)
仕訳
借方: 賃金 160円
貸方: 賃率差異 160円(有利差異)
3. 差異の判定
差異の符号 | 差異の種類 | 理由 |
---|
++ | 不利差異(借方差異) | 実際消費額が予定消費額を上回る(コスト増) |
−- | 有利差異(貸方差異) | 実際消費額が予定消費額を下回る(コスト削減) |
4. 会計年度末の処理
年度末には、月ごとに計上された賃率差異勘定の残高を売上原価勘定に振り替えます。
ケース①: 借方残高(不利差異)が 80 円の場合
借方: 売上原価 80円
貸方: 賃率差異 80円
ケース②: 貸方残高(有利差異)が 160 円の場合
借方: 賃率差異 160円
貸方: 売上原価 160円
5. まとめ表
処理タイミング | 計算・仕訳 | 差異の分類 |
---|
賃金消費時 | 予定賃率 × 実際作業時間 | – |
月末差異調整 | 実際消費額と予定消費額の差額を計算し調整 | 不利差異: 借方差異 / 有利差異: 貸方差異 |
年度末差異振替 | 賃率差異勘定の残高を売上原価勘定に振替 | 借方残高(不利差異) / 貸方残高(有利差異) |
この処理により、予定賃率を使用した場合の差異を正確に把握し、会計年度末に適切な原価計算が実現できます。
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