自らを律し、上を敬い、民に恵みを施し、義をもって使う
孔子は、鄭の名宰相・子産(しさん)について、「君子の徳を四つ備えていた」と称賛した。
この「四つの徳」とは以下の通り:
- 行己恭(こう):自らの行動には常に慎みと礼をもって臨むこと。
- 事上敬(けい):上位者や主君に対しては、礼と敬意を忘れず誠実に仕えること。
- 養民惠(けい):人民を養うときには、あたたかく恩恵をもって接すること。
- 使民義(ぎ):人民を動かすときには、正義と道理にかなうやり方を守ること。
これは、上に立つ者が権力を振るうのではなく、敬・恵・義といった徳をもって人を導くことの大切さを説いている。
子産のように、権威よりも「信頼される振る舞い」を体現する人物こそが、真のリーダーであると孔子は見ていた。
原文とふりがな付き引用
子(し)、子産(しさん)を謂(い)う。君子(くんし)の道(みち)、四(し)有(あ)り:
其(そ)の己(おのれ)を行(おこな)うや恭(きょう)、
其の上(かみ)に事(つか)うるや敬(けい)、
其の民(たみ)を養(やしな)うや惠(けい)、
其の民を使(つか)うや義(ぎ)。
上に立つ者は、
自らを正し、人を敬い、恵みを施し、義に従って人を動かすべきである。
注釈
- 子産(しさん)…名は公孫僑。鄭の賢臣。政治・道徳両面で模範とされ、多くの儒者から敬われた。
- 恭(きょう)…慎み深く、礼を忘れない態度。
- 敬(けい)…上位者への礼節と忠誠。
- 惠(けい)…慈しみ、思いやり、恩恵。
- 義(ぎ)…正義、公平、道理にかなうこと。
- 孔子がここで挙げた四徳は、「君子=リーダー」に不可欠な人格条件であり、今もなお指導者像として通用するもの。
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