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言葉は徳のあらわれであって、徳そのものではない

――見た目や言動に惑わされず、中身を見よ

孔子は、**言葉・勇気・徳(とく)・仁(じん)**の関係について、次のように説いた。

徳のある者は、必ず良い言葉をもっている。
しかし、良い言葉をもっている者が、必ずしも徳があるとは限らない。

仁のある者には、必ず勇が備わっている。
しかし、勇ある者が必ず仁であるとは限らない。

ここで孔子が語っているのは、本質と表面的な特徴との違いである。

  • 徳(とく)ある人は、人間的な深みがあるからこそ、
    その言葉にも自然と価値がにじみ出る。
  • だが、立派なことを言う人が必ずしも徳のある人間とは限らない。
    弁の立つ人は多くとも、その中にどれだけ「行い」が伴っているかは別問題。

また、仁=人を思いやる徳を備える者は、
「守るべきを守るための勇気」も持つ。
だが、勇気があってもそれが無鉄砲・粗暴・我欲のためであれば、それは仁ではない。

この章句は、表面的な評価に流されず、「人間の根にあるもの」を見抜く目を持てという教訓でもある。


原文とふりがな付き引用:

「子(し)曰(いわ)く、
徳(とく)有(あ)る者は必(かなら)ず言(げん)有り。
言有る者は必ずしも徳有らず。

仁(じん)者は必ず勇(ゆう)有り。
勇者は必ずしも仁有らず。


注釈:

  • 徳(とく) … 人格の根本的な品性や道義。
  • 言(げん) … 発言、言葉。ここでは内容があり、聴く価値のあるものを指す。
  • 仁(じん) … 思いやり・愛・誠実さといった徳の中核。
  • 勇(ゆう) … 勇気・果敢さ。正義に基づくかどうかが分かれ目となる。

1. 原文

子曰、邦有道、言危而行危也。邦無道、行危而言孫也。


2. 書き下し文

子(し)曰(いわ)く、邦(くに)に道(みち)有(あ)らば、言(げん)を危(あや)うくして、行(おこな)いを危うくす。邦に道無(な)ければ、行いを危うくして、言(げん)は孫(したが)う。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

「子曰く、邦に道有らば、言を危くして行いを危くす」
→ 孔子は言った。「国家に道(正義・秩序)があるときには、言葉も行動も慎重でなければならない。」

「邦に道無ければ、行いを危くして、言は孫る」
→ 「もし国家に正義がなければ(=乱れた世の中では)、行動には慎重さを保ちつつ、言葉は控えめにして従順に振る舞うべきである。」


4. 用語解説

  • 邦(くに):国、国家、社会。
  • 道(みち):道理、道徳、正義。社会秩序や倫理的な基盤を意味する。
  • 危(あやう)くす:ここでは「慎重にする」「厳格に律する」意。
  • 言を危くす/行を危くす:発言・行動をともに注意深く律すること。
  • 孫(したが)う/孫る(したがる):控えめにする、柔らかく従順にする、へりくだる意。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子はこう言った:

「国家が正しく治まっているときには、人はその言動に責任を持ち、慎重でなければならない。
しかし、国家に正義がなく乱れているときには、行動に慎重さを保ちつつも、言葉は控えめにしてへりくだるべきである。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、時代や組織の状況に応じた「言動のバランス」を説いた教えです。

  • 正しい社会では、言動に一貫性と覚悟を持つべき。
  • 混乱した社会では、軽率な言動が害になるため、行動には慎重さを、言葉には控えめさを。

つまり、倫理的行動の基盤は、状況判断と慎み深さにあるという、柔軟で深いリーダーシップ観がここに表れています。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

✅「健全な組織では、言葉も行動も責任をもって」

  • 透明性や正義のある組織においては、発言と行動の両面において厳しく自分を律することが求められる。
  • 軽々しい発言や、行動の伴わない理想論は逆効果。

✅「混乱した組織では、“行動で語る”姿勢を貫け」

  • 組織が混迷しているとき、意見を強く主張すると排除されることもある。
  • そのような環境では、行動の信念を保ちつつ、言葉は控えめに──それが信頼を築く手段。

✅「空気を読みすぎる“忖度”と、賢い“慎重さ”は違う」

  • 言葉を控えるのは、迎合のためではない。
  • 状況に応じて、語るとき・沈黙すべきときを見極めるのが、真の知恵である。

8. ビジネス用の心得タイトル

「語るべき時を知り、語らぬ強さを持て──言動の慎重さが信頼を築く」


この章句は、現代における危機管理・言動のセルフマネジメント・組織におけるリーダーの立ち居振る舞いに多くの示唆を与えてくれます。

健全な時代には自らを厳しく律し、混乱の時代には控えめに、しかし誠実に生きる──
孔子のこの言葉は、「言葉と沈黙の哲学」として、現代社会にこそ深く刺さる教訓です。


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