—— 道を語らず、小才に溺れる者たちへの警鐘
孔子は、無為に群れて過ごす者たちに、深い嘆きをもって語った。
「大勢が一日中集まっていながら、義(ただしさ)について一度も語らず、
ただ目先の小賢しい知恵を披露しあっている。――これは本当に困ったことだ」と。
人と集うならば、意味のある対話をせよ。価値ある問いを立てよ。
そうでなければ、その時間はただ消えてゆき、学びも徳も残らない。
表面的な利口さや自己顕示に終始することなく、義にかなう考えと行動を共に語り合うことが大切なのだ。
人生の時間は限られている。何に意識を向け、どう過ごすかで、その価値が決まる。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、羣居(ぐんきょ)すること終日(しゅうじつ)、言(げん)、義(ぎ)に及(およ)ばず、
好(この)みて小慧(しょうけい)を行(おこな)う。難(かた)いかな」
注釈
- 「羣居」:大勢で集まっていること。仲間と群れて時間を過ごすこと。
- 「義に及ばず」:正義・道義・人の道といった根本的なことに話が及ばない。
- 「小慧(しょうけい)」:こざかしい知恵。浅はかで利己的な利口さ、表面的な機転。
- 「難いかな」:「困ったことだ」「どうしようもない」といった孔子の嘆息。
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(時間を大切に)talk-of-righteousness
(義を語れ)avoid-trivial-smartness
(小才に溺れるな)
この心得は、現代においても「会議・雑談・SNSの時間をどう使うか」という視点で極めて示唆的です。
中身のある対話・価値のある問いかけが、学びと人間性の深まりを生む鍵となります。
1. 原文
子曰、羣居終日、言不及義、好行小慧、難矣哉。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、羣居(ぐんきょ)すること終日(しゅうじつ)、言(げん)義(ぎ)に及(およ)ばず、小慧(しょうけい)を好(この)みて行(おこな)う。難(かた)きかな。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 「子曰く、羣居すること終日」
→ 孔子は言った。「人が一日中集まっていても──」 - 「言、義に及ばず」
→ 「その話題が義(=道義・道徳的正しさ)に及ばないならば」 - 「小慧を好みて行う」
→ 「(代わりに)目先の小賢しい知恵を好んで用いるようであれば」 - 「難いかな」
→ 「なんと困ったことだ、嘆かわしいことだ」。
4. 用語解説
- 羣居(ぐんきょ):人々が集まって共に過ごすこと。
- 終日(しゅうじつ):一日中。時間を長く共にする様子。
- 義(ぎ):人としての正しさ、公平さ、道徳的価値。仁とともに孔子が重視する中心的徳目。
- 小慧(しょうけい):小賢しさ。表面的な才知・ずる賢さ・機転の速さなどを指し、ここでは深みのない利口さを批判している。
- 難矣哉(なんいかな):困難だ、手に負えない、残念だと嘆く言葉。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「人が一日中集まっていても、話が道義に及ばず、
代わりに小賢しい知恵ばかり使っているようでは、
本当に困ったことだ」。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「徳なき知識や機転の空しさ」**を孔子が嘆いたものです。
- 孔子は、人間が集まって語るならば「義」──正しさや道徳、人生の意義について語るべきだと考えていました。
- にもかかわらず、人々が集まりながらも「話題は浅く、行動は表面的な利口さ」に終始する様子に落胆しています。
- 「小慧」とは現代でいえば、“その場しのぎのテクニック”や“自分だけが得をしようとする小狡さ”のようなものです。
7. ビジネスにおける解釈と適用
◆ 「集まっても“正しさ”を語らねば意味がない」
会議・チーム・経営陣が集まっても、議論の核心が「道義」「ミッション」「誠実なあり方」に触れなければ、単なる形式論に堕する。
◆ 「小手先のテクニックより、判断の“軸”を持て」
すぐ使えるノウハウや営業話術は便利だが、“何が正しいのか”を軸にしなければ、組織は信頼を失う。
◆ 「人が集まる場に“意味”を問え」
集団で何かをする以上、「その場の対話や行動が、何に貢献するのか」を問う必要がある。目的なき集まり・意味なき言葉は、時間とエネルギーの浪費。
◆ 「表面的な利口さより、深い誠実さ」
“賢く見えること”に意識を向けるよりも、“誠実に考え、正しくあろうとする姿勢”を評価する文化こそが、持続可能な組織をつくる。
8. ビジネス用心得タイトル
「賢く語るより、正しさを語れ──小才に溺れず、義を貫け」
この章句は、**「知識や議論の内容が“徳”から離れると、人は小さく、空しくなる」**という本質的な人間観・組織観を示しています。
リーダー育成、会議文化の改善、社内コミュニケーション活性化など、多くのビジネス課題に対して有効な視座を提供する一節です。
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