目次
■引用原文(仮訳)
恥じなくてよいことを恥じ、
恥ずべきことを恥じないで、
恐ろしくないことを恐れ、
恐ろしいことを恐れない人々は、
邪まな見解をいだいて、悪いところ(=地獄)におもむく。
※本内容は『バガヴァッド・ギーター』第16章第7〜9節の精神と一致します。特に「悪性(アスラ性)」の特徴として、誤った判断・価値の混乱が挙げられています。
■逐語訳(意訳)
本来、恥じる必要のない善行や誠実さを恥じ、
恥ずべき嘘や利己を恥じずに生きる者がいる。
恐れるべき危機や倫理の逸脱を恐れず、
本来恐れる必要のない正義や勇気を恐れる者もいる。
こうした人々は、正しさの基準を見失い、堕落と混乱の道に進む。
■用語解説
- 恥じなくてよいこと:誠実さ、正直さ、真心、社会的には弱く見えるが精神的に尊い行為など。
- 恥ずべきこと:嘘、裏切り、利己的な行動、倫理に反した行為。
- 恐ろしくないこと:真理・誠実な対話・挑戦する姿勢など。
- 恐ろしいこと:傲慢・暴力・不正・自己欺瞞など、魂を腐らせるもの。
- 邪まな見解:価値観の転倒、真と偽・善と悪を取り違えること。
- 悪いところ(地獄):ここでは神の祝福から遠ざかる状態、精神の混乱・迷妄を意味する。
■全体の現代語訳(まとめ)
本当に大切なことを軽んじ、
見せかけや欲望を大切にするようになると、
人は善悪の判断を失い、魂の方向感覚を狂わせてしまう。
その結果、精神的堕落の道をたどり、
心の平安や本来あるべき人生の軌道から外れてしまう。
■解釈と現代的意義
現代は、表層的な評価やSNSによる見せかけの価値観がはびこる時代です。
その中で、「正直であること」「誠実に働くこと」「弱さを認めること」が恥とされ、
逆に「虚勢・利己・ごまかし」が賢さや要領の良さとされがちです。
この章句は、そのような価値の倒錯を警告し、
人としての芯を見失わないことの重要性を強く示しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
組織倫理 | 不正を黙認する空気や「見て見ぬふり」は、組織文化を内側から腐らせる。 |
リーダーの品格 | 「叱られること=悪」ではない。時に正しさのために孤独を選ぶ覚悟が信頼を生む。 |
判断力と洞察 | 数字や立場だけで物事を見ず、「本当に恐れるべきこと」を見極める訓練が必要。 |
新人教育 | 恥を感じる対象を間違えないよう、倫理観と価値基準を言語化して伝える。 |
■心得まとめ
「善を恥じず、真を恐れず、誠に生きよ」
心のコンパスが狂えば、行き着く先は迷いと堕落の道となる。
見せかけの価値ではなく、本質を見抜く目と恥じるべき対象を誤らぬ心――
それが現代を生きる私たちに課せられた精神の修練である。
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