その他有価証券の評価替えでは、会計上の処理と税法上の取扱いが異なります。税効果会計を適用して、この差異を調整する仕訳を行います。以下では、具体例を交えて解説します。
例5: 時価が取得原価を下回る場合の仕訳
- 状況: その他有価証券(取得原価 1,000円)が時価 800円に下落。
評価差額: 1,000円 – 800円 = 200円(減少)。 - 法人税等の実効税率: 40%
- 調整金額: 200円 × 40% = 80円
仕訳
借方: その他有価証券評価差額金(純資産) 200
貸方: その他有価証券 200
借方: 繰延税金資産 80
貸方: その他有価証券評価差額金(純資産) 80
例6: 時価が取得原価を上回る場合の仕訳
- 状況: その他有価証券(取得原価 1,000円)が時価 1,100円に上昇。
評価差額: 1,100円 – 1,000円 = 100円(増加)。 - 法人税等の実効税率: 40%
- 調整金額: 100円 × 40% = 40円
仕訳
借方: その他有価証券 100
貸方: その他有価証券評価差額金(純資産) 100
借方: その他有価証券評価差額金(純資産) 40
貸方: 繰延税金負債 40
翌期首の再振替仕訳(例7)
前期末の決算で評価替えを行った場合、翌期首に再振替仕訳を行い、同時に税効果会計の仕訳を逆仕訳します。
- 前期末の仕訳(例7):
借方: その他有価証券評価差額金(純資産) 200
貸方: その他有価証券 200
借方: 繰延税金資産 80
貸方: その他有価証券評価差額金(純資産) 80
翌期首の逆仕訳
借方: その他有価証券 200
貸方: その他有価証券評価差額金(純資産) 200
借方: その他有価証券評価差額金(純資産) 80
貸方: 繰延税金資産 80
ポイント
- 純資産直入法
評価差額は「損益項目」ではなく「純資産項目(その他有価証券評価差額金)」で処理します。 - 税効果会計の適用
法人税等の調整は、「繰延税金資産」または「繰延税金負債」で処理します。 - 翌期首の再振替仕訳
評価差額や税効果会計の仕訳を逆仕訳することで、評価替えを戻します。
この処理により、その他有価証券の評価差額と法人税等が正確に対応し、財務報告の透明性が向上します。
コメント