商品群ごとの分析
経営改善を進めるためには、商品をその収益性に応じて分類することが重要です。商品を分析する際、賃率を活用することでより的確な判断が可能となります。
第一に、損益分岐賃率を下回る商品群、いわゆる「出血商品」です。これらの商品は赤字を生む原因であり、早急な対応が求められます。
第二に、損益分岐賃率を上回っているものの、必要賃率には届いていない「貧血商品」です。例えば、ある商品の賃率が45円だった場合、この商品は固定費を賄うことはできても、十分な利益を上げられない状態にあります。
第三に、必要賃率を上回る「健康商品」です。賃率が55円の商品がその一例であり、収益を安定的に生み出すため、積極的に拡販や資源配分を行うべきです。
賃率分析の具体的な活用事例
K社のケース
K社はステンレス二次製品の製造販売を行っており、過去には市場の余剰需要を取り込むことで収益を確保していました。しかし、石油ショック後の景気悪化により赤字に転落しました。
新たに社長に就任したD氏は、賃率を用いた分析を導入。これにより、従来の加工高比率だけでは見えなかった商品の収益性を明確化しました。
結果として、加工高比率が低いものの賃率が高い商品を再評価し、事業改善を進めました。D氏のリーダーシップのもと、この手法は短期間で会社再建の大きな成果を上げました。
G社のケース
玩具製造を専門とするG社は、過当競争や海外市場の追い上げにより赤字に陥りました。複数のコンサルタントによる内部改善が試みられましたが、効果は限定的でした。
そこで、外部活動を重視し、商品の収益性に基づいた分析を実施しました。その際、生産予定表を基に賃率を算出し、収益性の低い出血商品を特定。
これを速やかに廃止するとともに、収益性の高い新商品を投入しました。結果として、G社は数か月以内に黒字転換を果たしました。
賃率を活用した改善策のポイント
- 出血商品の廃止:
- 損益分岐賃率を下回る商品は速やかに生産を中止。
- 健康商品の拡販:
- 必要賃率を上回る収益性の高い商品を事業の中心に据える。
- 貧血商品の改善:
- 必要賃率に届かない商品は、販売方法や価格戦略を見直し収益性を高める。
- 新商品の開発:
- 陳腐化した商品を代替するために、収益性の高い新商品の開発を優先。
賃率分析の重要性
賃率を基準に商品収益性を評価することで、単なる加工高比率や付加価値率では見過ごされる収益の構造が見えてきます。この分析は、経営改善における方向性を明確にし、効率的なリソース配分を可能にします。
特に、賃率が高いにもかかわらず見落とされがちな商品を発見することは、企業の収益基盤を再構築する重要な手段となります。従来の管理手法にとらわれず、客観的なデータに基づいた意思決定が経営改善の鍵となるのです。
実務における注意点
賃率を活用する際には、次の点に注意が必要です。
- 短期的な改善と長期的な視点のバランス: 出血商品の廃止や新商品の投入は短期的な効果が期待できますが、将来性を見据えた戦略が不可欠です。
- コスト削減への依存回避: 賃率が低い商品に対してコスト削減のみで対処することは、根本的な解決策になりません。
- 市場の変化への対応: 商品が陳腐化した際のリスクを常に意識し、柔軟な事業転換を図る必要があります。
これらを踏まえ、賃率を経営改善の指針として活用することで、企業は持続可能な成長を実現できます。
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