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誘惑にも染まらず、策にも頼らない ― 本当の高潔さとは

権力や富、美しさや華やかさに近づかない人は、清らかで立派だ。
だが、それ以上に清いのは、それらに近づいても染まらず、自分を貫く人である。
また、策略や打算を知らない人は高尚であるが、
それらを理解したうえで、なお使わない人こそ、真に崇高だといえる。
清潔とは距離ではなく、心の在り方。高尚とは無知ではなく、節度の選択である。


「勢利(せいり)紛華(ふんか)は、近(ちか)づかざる者(もの)を潔(きよ)しと為(な)し、
之(これ)に近づきて而(しか)も染(そ)まざる者を尤(もっと)も潔しと為す。
智械機巧(ちかいきこう)は、知らざる者を高(こう)しと為し、
之を知りて而も用(もち)いざる者を尤も高しと為す。」


注釈:

  • 勢利紛華(せいりふんか)…権力・富・美麗さ・華やかさなど、世俗的な魅力や誘惑の象徴。
  • 潔し(きよし)…清らかで気高いこと。心が穢れに染まっていない状態。
  • 染まざる(そまざる)…世俗の価値観や誘惑に影響されず、自分の信念を保つこと。
  • 智械機巧(ちかいきこう)…策略、計略、打算などの小賢しい手段。人を操ろうとする知恵。
  • 高し(たかし)/尤も高し(もっともたかし)…高潔であること。その中でも特にすばらしい在り方。

1. 原文:

勢利紛華、不近者爲潔、近之而不染者爲尤潔。
智械機巧、不知者爲高、知之而不用者爲尤高。


2. 書き下し文:

勢利紛華(せいりふんか)は、近づかざる者を潔(けつ)と為し、之に近づきて而(しか)も染まざる者を尤(もっと)も潔しと為す。
智械機巧(ちかいきこう)は、知らざる者を高しと為し、之を知りて而も用いざる者を尤も高しと為す。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ):

  • 「勢利紛華は、近づかざる者を潔と為し」
     → 権勢や金銭、華やかな世俗の世界に近づかない人は、清廉な人とされる。
  • 「之に近づきて而も染まざる者を尤も潔しと為す」
     → しかし、それに接していながら心を染められない人こそ、さらに清らかである。
  • 「智械機巧は、知らざる者を高しと為し」
     → 小賢しい策略や抜け目ない器用さに無縁な人は、高尚とされる。
  • 「之を知りて而も用いざる者を尤も高しと為す」
     → それらを知っていながら、あえて使わない人こそ、最も高尚である。

4. 用語解説:

  • 勢利紛華(せいりふんか):権力・利益・華やかな世俗のこと。誘惑や虚栄の象徴。
  • 潔(けつ):清らかさ、潔白さ。道徳的に汚れのない状態。
  • 尤(もっと)も~しと為す:最も〜であると見なす。とくに優れているという意味。
  • 智械機巧(ちかいきこう):抜け目のない知恵、策略、器用な世渡り術。
  • 高(こう):高潔、気高いこと。

5. 全体の現代語訳(まとめ):

権力や金銭、世俗的な華やかさに近づかない者は、潔白な人とされるが、
それらに関わりながらも決して心を汚さない者こそ、より一層清らかである。
また、抜け目のない知恵や策略を知らない人は高尚とされるが、
それを知りながらもあえて使わない人こそ、さらに気高いのである。


6. 解釈と現代的意義:

この章句は、**「真の清廉さ・高潔さとは“無知ゆえの純粋”ではなく、“知りながらも染まらない・使わない”という意志と節制にある」**ことを説いています。

権力やお金の誘惑に最初から近づかないのも確かに潔いが、
それに触れながらも欲に流されない人間こそ、より強い意志と高い品格を持つ。
また、小賢しさに無縁なのは美徳だが、策略を知ったうえで“使わない選択”をする人こそ、さらに高潔であるという逆説的な倫理観が示されています。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き):

  • 「利権・名誉に触れても、判断を濁さない人物が真に信頼される」
     大きな利益や地位が絡む場面でも、原則と倫理を曲げず、冷静な判断を下す人は、組織の中核を担うべき人物です。
  • 「駆け引きや損得の論理を知っていても、あえて公正を選ぶ」
     営業や交渉の場で“勝つ”ための手段は知っていても、それを使わずに正々堂々とした道を選ぶ人には、持続的な信頼が集まります。
  • 「力を持つ者こそ、自制と節度が試される」
     リーダーや経営層にとっては、周囲からの誘惑や巧妙な提案に流されず、自らブレーキをかける判断力が人格の真価を問われるポイントです。

8. ビジネス用の心得タイトル:

「知りてなお使わず──節制の力が人を高める」


この章句は、現代社会においても非常に通用する「真の強さ」「高潔さ」の定義を提示しています。

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