目次
📜引用原文(日本語訳)
一一*
風が吹いても岩山が動揺しないように、修行僧は、情欲が滅びてなくなるから、岩山のようにゆるがない。
― 『ダンマパダ』 第二章 第十一偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 風が吹いても岩山が動揺しないように:どんなに強い風が吹こうとも、巨大な岩山はびくともしない。これは比喩であり、心が外的刺激に動かされない状態を象徴している。
- 修行僧は、情欲が滅びてなくなるから:修行者は煩悩、特に感覚的な欲望(情欲)を滅している。
- 岩山のようにゆるがない:そのため、心は外的刺激や誘惑によって動揺せず、絶対的な安定性を保っている。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
情欲(じょうよく) | 感覚的欲望や執着、特に五欲(食欲・色欲・名誉欲・睡眠欲・財欲)を含む煩悩の中心的なもの。 |
風と岩山の比喩 | 「風」は外界の変化・誘惑・非難・賞賛などを象徴し、「岩山」は動じない安定した心の象徴。 |
ゆるがない心 | 仏教における理想の境地。「動じぬ」「ブレない」精神状態=涅槃への近接。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
たとえどれほどの風が吹こうとも岩山が動じないように、
感覚的欲望を克服した修行者の心は、いかなる誘惑や混乱にも揺れ動くことはない。
それは、徹底して煩悩を捨てた者に与えられる、静かで不動の境地である。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、「感情に支配されず、自己の中心に安定して在る力」を説いています。
日常生活では、外からの刺激――他人の言葉、状況の変化、誘惑、承認欲――に心が振り回されがちです。
しかし、仏教が目指す修行者の姿とは、そうした外的要因にまったく揺るがされない境地です。
欲望を克服した心は、静かで、清らかで、まるで大地に根を張った岩山のように強く、動じない。
これは、現代人が目指す「ブレない自己」「外圧に強い精神」に通じる普遍的なメッセージです。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実践への応用例 |
---|---|
メンタルの安定 | 上司の言葉、顧客の反応、市場の変動など、日々の「風」に一喜一憂しない精神力がプロフェッショナルには不可欠。 |
誘惑に揺れない判断力 | 利益や名声といった短期的な欲望に流されず、信念と倫理を基盤に意思決定する力が求められる。 |
リーダーシップ | 周囲の動揺や混乱にも動じず、岩のように安定して組織を導くリーダーは、信頼の軸となる。 |
自己コントロール | 衝動的な感情や欲求ではなく、原則や長期的視野に基づいて行動する習慣が、成熟した働き方に繋がる。 |
✅心得まとめ
「風の中にあっても揺るがぬ岩となれ」
感情や欲望は、私たちを内から揺らす「風」である。
しかし、それに反応せず、中心を保ったまま在ること――それが真の自由であり、強さである。
欲に揺らがず、恐れに屈せず、自らの道に立ち続ける者こそ、現代の修行者といえるだろう。
コメント