心が広く、人生の軸がしっかり定まっている人は、
たとえ莫大な報酬――何億円もの給料で誘われたとしても、
それを単なる「紙切れ」や「瓦のかめ」のように見なし、心がまったく動じることはない。
一方で、心が狭く、目先の損得にとらわれている人は、
髪の毛一本ほどのわずかな金銭の差でさえ、
まるで車輪のように心がくるくると動き、すぐに誘惑されてしまう。
本当に自由な心とは、
お金の大小に関わらず、それに振り回されない精神のあり方である。
原文とふりがな付き引用
心曠(こころひろ)ければ則(すなわ)ち万鍾(ばんしょう)も瓦缶(がかん)の如(ごと)く、
心隘(こころせば)ければ則ち一髪(いっぱつ)も車輪(しゃりん)に似(に)たり。
注釈
- 心曠(こころひろし):心が広く、おおらかで、物事にとらわれない状態。
- 万鍾(ばんしょう):非常に高額な報酬。ここでは何億円にも相当する厚遇のたとえ。
- 瓦缶(がかん):素焼きのかめ。転じて、価値のないもの。
- 心隘(こころせばし):心が狭く、すぐに損得で動いてしまうさま。
- 一髪(いっぱつ):髪の毛一本ほどのわずかなこと。
- 車輪(しゃりん):すぐに回る=すぐに心が動くことのたとえ。
1. 原文
心曠則萬鍾如瓦缶、心隘則一髪似車輪。
2. 書き下し文
心曠(こころひろ)ければ則(すなわ)ち万鍾(ばんしょう)も瓦缶(がかん)の如(ごと)く、
心隘(せま)ければ則ち一髪(いっぱつ)も車輪(しゃりん)に似(に)たり。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)
- 「心が広くゆったりしていれば、万鍾(=非常に多くの財貨)でさえ、ただの土器のように軽く感じられる」
- 「心が狭くなっていれば、たった一本の髪の毛すらも、車輪ほどに重く大きく感じられる」
4. 用語解説
- 心曠(しんこう):心が広く、ゆったりしていること。寛容・悠然。
- 万鍾(ばんしょう):大きな報酬・俸禄のこと。古代中国の高額な給金の単位。
- 瓦缶(がかん):瓦や素焼きの土器。価値の低いものの象徴。
- 心隘(しんあい):心が狭いこと。器量の小ささや余裕のなさ。
- 一髪(いっぱつ):一本の髪の毛。取るに足らぬ微小なものの象徴。
- 車輪(しゃりん):大きく重い車の車輪。過剰な重みや大事に感じられる様。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
心にゆとりがあれば、どれだけ大きな財産や利益であっても、ちょうど土器のように軽く取るに足らないもののように思える。
しかし心が狭くなっていると、ほんの些細な出来事すら、車輪ほどに重く重大なものとして感じられてしまう。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、人間の“心の器”が、物事の受け止め方すべてを決めているという心理的真理を語っています。
- 心が広い人は、成功や報酬にも執着せず、失敗や侮辱も受け流せる
- 心が狭い人は、わずかな損得・批判・誤解すらも深刻に受け止めてしまう
- つまり、「ストレス耐性・幸福感・人間関係の質」すべてが**“自分の心の容量”で決まる**ということ
これは、ストア派哲学や仏教の「一切唯心造」にも通じる思想です。
7. ビジネスにおける解釈と適用
✅ 「器の大きさ」がリーダーシップの質を左右する
- 目の前のトラブル、部下の失敗、顧客のクレーム──それをどう捉えるかで対応の質が変わる。
✅ 「心の狭さ」は判断ミスと感情過敏を生む
- 小さな発言に怒る、ささいな損に執着する……これらは意思決定のブレーキとなり、組織を消耗させる。
✅ 「心が広ければ、成功にも執着しない」
- 過剰な報酬や名誉への欲望は、冷静な判断を曇らせる。「瓦缶のように軽んじる」姿勢が、長期的成功を支える。
✅ 心理的レジリエンスを高めるには、“心を広げる習慣”を
- 瞑想、自然とのふれあい、感謝の記録、読書、対話──これらは日々の心の器を広げる実践。
8. ビジネス用の心得タイトル
「心の広さが、重荷を軽くする──器量がすべてを決める」
この章句は、マネジメント研修・EQ(感情知性)トレーニング、またはストレスマネジメント講座の核として極めて有効です。
コメント