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■引用原文(日本語訳)
「聖バガヴァットは告げた。
おお、その主要なものをあなたに語ろう。私自身の示現は神的であり、私の〔示現の〕多様性は限りがないから。」
(『バガヴァッド・ギーター』第10章 第19節)
■逐語訳(一文ずつ)
- śrī-bhagavān uvāca
→ 聖なる主(バガヴァット=クリシュナ)は言った。 - hanta te kathayiṣyāmi divyāḥ hy ātma-vibhūtayaḥ
→ さあ、私はあなたに神的なる自己の示現を語ろう。 - prādhānyataḥ kuru-śreṣṭha nāsty anto vistarasya me
→ 主要なものを語ろう、クル族の優れた者よ(アルジュナ)。なぜなら、私の展開(顕現)には限りがないのだから。
■用語解説
- vibhūti(示現/威光):神(バガヴァット)の現れ。力、顕現、神性の具体的表れ。
- divyāḥ(神的なる):人間的領域を超えた、神聖で超越的な性質。
- prādhānyataḥ(主要なものを):無限の中から、特に重要なものを抽出して述べること。
- nāsti antaḥ(限りがない):終わりがない、無限である。
- vistarasya(展開・広がり):神の顕現の無限の広がり、多様性。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナはアルジュナに対して、「神としての私の顕現は、あまりにも多様で限りがない。しかしその中でも、特に重要な顕現について今から話そう」と述べている。
この言葉は、無限なる真理をすべて言葉で尽くせないが、核心を伝えることでその全体像に迫る道を開こうとしている意図を示す。
■解釈と現代的意義
この節は、「神の顕現(真理の表れ)」は多様であり、人間の知識ではそのすべてを理解し尽くすことはできないことを認めたうえで、それでも「核心」をつかむことで、全体へと到達できるという示唆を与えています。
現代においても、情報・知識・現象は無限ですが、「本質」や「原理」を知ることで、複雑な世界をシンプルに見通す智慧を得ることができます。重要なのは“すべてを知る”ことより、“中核を掴む”ことです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
戦略思考 | ビジネスには無数の選択肢があるが、“核心的価値”を明確にすることで全体が整う。 |
情報処理 | 情報過多の時代において、“重要な示現(要素)”を選び抜く力が意思決定を左右する。 |
組織運営 | 社員一人ひとりが神の示現のように多様な価値を持つ。だが、共通のビジョン(核心)を語ることで組織が統合される。 |
プレゼン/教育 | 聴衆にすべてを語る必要はない。要点(prādhānyataḥ)を伝えることで本質が伝わる。 |
■心得まとめ
「全てを語らずとも、真の核心を語れば全体が見える」
真理や知識の顕現は無限にあるが、人はそのすべてを網羅することはできない。
しかし、「本質的な核心を捉えること」によって、それら全体の意味を直感することが可能である。
ビジネスでも人生でも、“本質を語れる人”こそが周囲を導くのである。
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