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■原文(七)
いかなることにもあくせくするな。
他人の従者となるな。
他人に依存して生活するな。
法による商人として暮すな。
■逐語訳
- いかなることにもあくせくするな:どんな物事に対しても、焦りや執着をもって駆け回るような生き方をしてはならない。
- 他人の従者となるな:誰かの権威や利益のもとに盲従し、自分の意思を手放してはならない。
- 他人に依存して生活するな:経済的・精神的に他者をあてにして生きることを避け、自立せよ。
- 法による商人として暮すな:仏法(ダルマ)を利用して名声や利益を得るような、形式的な「宗教ビジネス」に堕してはならない。
■用語解説
- あくせくする:現代語で言えば「焦る」「慌ただしく損得に追われる」状態。
- 従者(じゅうしゃ):自分の判断を放棄して、他人に付き従う人。
- 法(ダルマ)による商人:仏教の教えを名目にしながら、それを物質的な利益や社会的評価に変換するような態度。
- 例:信仰や教義を利用して人を集め、利を得る。
- 現代的には「スピリチュアルビジネス」の落とし穴にも通じる。
■全体の現代語訳(まとめ)
どんな事柄に対しても、損得や焦りに駆られて動いてはならない。
他人の力や立場に盲目的に頼る生き方は、心を縛り、自由を失わせる。
生活の糧は自分で立て、他人に頼らぬようにせよ。
ましてや、仏法を利益や名誉のための手段として使うような、**“教えを売りものにする心”**は、道を外れた姿である。
■解釈と現代的意義
この節は、**「精神的にも経済的にも自立して生きよ」**というメッセージです。
現代社会では、目に見えぬ形で他人の評価、組織の仕組み、流行、権威などに「従属」してしまいがちです。
また、スピリチュアルや宗教を利用した利益追求も目立ちます。
この句は、そんな現代の「心の依存」や「外的成功への欲望」から離れ、本来の自立と静寂の道に立ち戻るよう呼びかけています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用 |
---|---|
独立心と自律 | キャリアや事業においても、他人任せではなく「自ら考え、自ら決断する」ことが尊重される。 |
権威や流行への盲従 | 有名企業・著名人のやり方を無批判に模倣しても、本質を見失いがち。自分の信念と軸が必要。 |
真の専門性 | 知識や思想(例:宗教・哲学・自己啓発)を「商品」として使うのではなく、本質を実践し、誠実に分かち合う姿勢が問われる。 |
起業・商売の姿勢 | お客様の不安や欲望に付け込む形のマーケティングではなく、誠意ある提供と「道徳的透明性」が持続可能なビジネスを育む。 |
■心得まとめ
「自分の足で立ち、心で見て、道に生きよ」
焦らず、誰かの背後に隠れず、誰かの評価に頼らず。
そして、道(法)を「手段」にするのではなく、生きる根そのものとして受け止めること。
それが、仏弟子であれ、現代のビジネスパーソンであれ、真に自由で信頼される人間の姿です。
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