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■引用原文(日本語訳)
すべての束縛を断ち切り、恐れることなく、
執着を超えて、とらわれることのない人――
彼を私は〈バラモン〉と呼ぶ。
(『ダンマパダ』第397偈|第二六章「バラモン」)
■逐語訳
- Sabbasaṃyojanaṃ chetvā:すべての束縛(サンヨージャナ)を断ち切り
- Yo ve na paritassati:もはやおののくことのない人(=恐れを持たない人)
- Saṅgātigaṃ visaṃyuttaṃ:執着を超え、あらゆる結びつきから解き放たれた人
- Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:その人こそ、私は〈バラモン〉と呼ぶ
■用語解説
- 束縛(saṃyojana):我執・欲望・慢心・無知など、輪廻の原因となる精神的な縛り。十のサンヨージャナ(十結)として詳説される。
- 恐れ(paritassati):喪失・変化・非難などに対する心理的な動揺や不安。
- 執着(saṅga):愛着・欲望・物への固執。人や物事に「これが必要」と思い込む心。
- 超越する(saṅgātigaṃ):そうした執着を超えて、「それがあってもなくてもよい」と思える心の自由。
- 解き放たれる(visaṃyuttaṃ):完全に関係性を断ち切った状態。精神的独立。
■全体の現代語訳(まとめ)
あらゆる束縛を断ち切り、何ものにも怯えることなく、
執着を乗り越えて、とらわれない心を持つ人――
そのような完全に自由で落ち着いた境地に達した者を、
仏陀は〈バラモン〉と呼ぶのである。
■解釈と現代的意義
この偈文は、「自由とは、物理的な状態ではなく、心の状態である」ことを明確に教えています。
誰かの評価に縛られ、将来への不安におびえ、成果に執着している限り、
どれだけ環境が整っていても、心は不自由のままです。
真に自由な人とは、恐れず、執着せず、「あるがまま」を受け入れて生きる人。
それは同時に、最も安定し、最も力強く、最も美しい生き方でもあります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
精神的レジリエンス | 組織の変化や評価の揺れに動じないことで、冷静に長期視点の判断ができる。 |
評価・報酬への執着の超越 | 成果主義の中でも、「意味ある仕事」「価値ある行動」に自らの軸を置くことで、ブレない働き方ができる。 |
心理的安全性の源 | 周囲に恐れや敵意を持たず、束縛されない姿勢が、他人にも安心感と信頼を与える。 |
持続可能なリーダーシップ | 支配・所有・独占ではなく、「手放す力」や「託す力」を持つリーダーこそ、強くて優しい存在となる。 |
■心得まとめ
「恐れず、執着せず――心の自由こそ最上の力」
私たちは何に縛られているのか?
人間関係、名誉、期待、不安――それらを断ち切ったとき、
心には深い静けさと明晰さが訪れる。
バラモンとは、何にもとらわれない心の境地に達した者。
ビジネスにおいても、恐れと執着を超えた視座こそが、
最も高次のリーダーシップと幸福を導くのです。
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