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移ろうものを越えて、変わらぬ真理を見よ


目次

■原文(日本語訳)

第2章 第16節
クリシュナは言った。
「非有(身体)には存在はない。実有(個我)には非存在はない。真理を見る人々は、この両者の分かれ目を見る。」


■逐語訳

  • 非有(アサット)には存在はない(ナ・アサト・ヴィディヤテ・バーヴァハ):変化し滅びるもの(身体・物質)には、永続的な実体はない。
  • 実有(サット)には非存在はない(ナ・サト・ヴィディヤテ・アバーヴァハ):真に存在するもの(魂・アートマン)は、消えることがない。
  • 真理を見る人々(タットヴァ・ダルシビヒ):実在と非実在を見分ける智慧ある人々。
  • 分かれ目を見る(ウバヨール・アピ・ドリシュタハ):サットとアサット、永遠と無常の違いを明確に認識している。

■用語解説

  • サット(सत्):永遠・不変・実在。ここではアートマン(真の自己)を意味する。
  • アサット(असत्):無常・不実在・幻。肉体・物質・現象世界など、変化して消え去るもの。
  • バーヴァ/アバーヴァ:存在/非存在。ある・ないという本質的状態。
  • タットヴァ・ダルシ(真理を見る者):タットヴァ=真理、ダルシ=見る者。覚者・賢者を指す。

■全体の現代語訳(まとめ)

クリシュナは語る。「変わるものには本当の存在はなく、変わらぬものには滅びはない。真理を見抜く賢者は、これら“存在するもの”と“存在しないもの”の違いを見定める」と。
つまり、物質(身体)は一時的な現象であり、本当に“在る”のは魂(アートマン)であると明言している。


■解釈と現代的意義

この節は、『バガヴァッド・ギーター』の哲学的核心の一つです。
私たちは、目に見えるもの(身体、財産、地位)を「あるもの」と捉えがちですが、それらはすべて時間とともに変化し、やがて失われます。
それに対して、魂・本質・真の自己は、決して消えることのない存在であり、それを見極めることが「智慧ある生き方」なのです。

この視点を持つことで、人生のあらゆる苦悩(死、喪失、変化)を超える精神の基盤が築かれます。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈と応用例
本質と現象の区別売上や評価などの“外的現象”に振り回されず、自社や自分の“本質的価値”に基づいて意思決定する。
変わらぬ信念の保持組織変化・時流の変化があっても、核となるビジョンやミッションを見失わないことが信頼と継続性を生む。
真の資産とは何か財や人材、設備など“目に見える資産”よりも、価値観・関係性・文化など“目に見えない資産”の重要性を認識する。
リーダーの思考軸「今あるもの」ではなく「何が本当に変わらないか」に基づいて戦略を立てることで、長期的視野が持てる。

■心得まとめ

「目に見えるものは滅び、見えぬ真理は残る」
すべての現象は過ぎ去る。しかし、その中に在る変わらぬもの――魂・真理・信念――を見極められる者は、揺るぎない人生を歩むことができる。
ビジネスにおいても、変化の時代だからこそ、「何が消えるもので、何が本質か」を見抜く眼差しが求められている。


この節から、いよいよ魂(アートマン)の不滅性が体系的に論証されていきます。続く第17節では「不可知なるアートマンの実在」が語られます。

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