■ 引用原文(日本語訳)
たえず(道に)思いをこらし、つねに健く奮励する、
思慮ある人々はニルヴァーナに達する。これは無上の幸せである。
――『ダンマパダ』第四章「はげみ」第3節
■ 逐語訳(一文ずつ現代語訳)
- たえず(道に)思いをこらし、
常に仏道の真理を忘れず、心を集中して思索・観察を続ける者は、 - つねに健く奮励する、
怠けることなく心身を整えて精進し、努力を惜しまない。 - 思慮ある人々はニルヴァーナに達する。
知恵と注意深さを持つ者は、ついには煩悩を超えた完全な安らぎ(涅槃)に至る。 - これは無上の幸せである。
この境地こそが、他に比べるもののない究極の幸福である。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
思いをこらす(ヨガッチャッタ) | 精神統一・正念・心を真理に集中すること。 |
健く奮励する(ヴィーリヤ) | 身心の力を尽くして努力すること。仏教の四正勤の一つ。 |
思慮ある人々(パンディタ) | 知恵と観察力を持ち、軽はずみに行動しない人。 |
ニルヴァーナ(涅槃) | 煩悩の火が完全に消えた境地。究極の静けさと解放。 |
無上の幸せ(パラマ・スッカ) | 世俗的な快楽では得られない、精神の完全な自由と至福。 |
■ 全体の現代語訳(まとめ)
常に道に心を向け、誠実に努力を続ける人は、やがて「悟り」と呼ばれる静寂の境地――ニルヴァーナに到達する。それは、外的な成功や一時の喜びとは比べものにならない、最上級の幸福であると説かれる。
■ 解釈と現代的意義
この節は、「心の集中」と「持続的な努力」の重要性を強調しています。現代人が抱える焦燥や不安の多くは、「一点に集中できず、努力が散漫になる」ことに起因しています。
仏教の教えは、外に答えを求めるのではなく、内なる心を澄ませ、持続して道を歩むことの中に、深い幸福と安らぎがあると示しています。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
集中力の重要性 | マルチタスクではなく、一つひとつの仕事に心をこめる「全集中」が成果を高める。 |
継続的努力(奮励) | 長期プロジェクトや起業など、途中での困難を乗り越えるには、一貫した努力が欠かせない。 |
リーダーの心構え | 静かに、しかし確実に努力を重ねるリーダーは、部下に安心感と信頼を与える。 |
幸せの再定義 | 地位や報酬よりも、自ら納得できる努力と道に生きることが、持続可能な幸福感をもたらす。 |
■ 心得まとめ
「心を定め、歩みを止めぬ者は、深く静かな幸福に至る」
揺らぐ世の中にあって、真の幸せとは外にあるのではなく、
道に心を向けて歩み続けるその中にある。
努力を積み重ね、思慮深く歩む者こそ、何ものにも揺るがぬ安らぎを得ることができるのです。
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