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二頭立ての馬車

この事例から得られる教訓は、企業が持つ強みを明確に理解し、それを中心に事業の方向性を定義づけて集中化することの重要性です。特にO社は、単一の製品群に依存せず、複数の有望な技術や製品分野で事業を展開することで、企業の成長と収益の多角化を実現する道筋が見えてきます。

1. 強みの集中と明確な定義づけ

  • 深滲炭技術は、O社が世界に誇る特異性であり、広い市場での高いニーズが見込まれます。この技術はピストンピン加工の下請けでとどまらせるべきではなく、拡大を見据えた大規模展開が必要でした。
  • 電子制御機械の事業は、NC制御、ロボット、CAD/CAMといった高度な制御が求められる分野であり、成長が見込まれる産業です。この分野は他社が容易に参入しにくく、高収益が期待できるため、O社の二本目の柱として最適でした。

2. 事業定義によるビジョンとスケールの拡大

  • 「深滲炭と電子制御」という明確な事業定義を持つことで、O社は全く違った方向性を持つ製品群を統合しやすくなりました。このビジョンの統一により、会社全体のマーケティング戦略や技術開発も一貫性を持って進められ、企業としての競争力が増します。

3. 未来志向と持続的な成長への展望

  • 深滲炭技術の国内外への積極的な展開や、電子制御事業の可能性を活かした製品群の開発は、中長期的な成長を見据えたものであり、企業の持続可能性と収益性を大きく高めることが期待されます。

O社のように、企業が自社の強みと市場ニーズに合わせた「二頭立ての馬車」戦略を採用することで、多角化を進めつつも強みを活かし、安定した成長を実現することができるのです。

製品は多彩で、それぞれが特色をもっていた。といえば聞こえはいいが、本当は手当り次第にいろいろなものを手がけたという感じで、何ともまとまりの悪い製品構成で、次のようなものだった。

  • 1、船舶用エンジンのピストンピンの焼入
  • 2、ロール
  • 3、省力機械
  • 4、ロール成型機
  • 5、中型船の燃料ポンプ駆動装置
  • 6、砥石用金型
  • 7、自動車部品のプレス加工

というものだった。それぞれに簡単な説明を加えておこう。

たった二〇〇名で、これだけのことを行なっているのだから、何もかも中途半端になるのは当然である。

それだけに、事業を再編成してビジョンを確立すれば、期して待つべき大きな可能性があるのだ。

超スケールの超高級の市場をどう事業化するかこそ、社長の価値を決定するのだ。

こうして、国内需要に答えることが第一段階であり、次には諸外国の市場の開拓と供給体勢の整備計画というよりは、グローバル戦略を練ることである。無限ともいえる需要に応ずることこそ、男子一生の本懐ではないだろうか。

この定義づけに基づいて、0社の事業を見直すと、「手当り次第にいろいろなものを手がけた」事業が、明確なビジョンを持ち、洋々たる可能性をもったスケールの大きな総合企業に変貌してしまう可能性がある。0社の事業は、文字どおり「ボーダレス企業」なのである。

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