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組織いじりという空しい処方箋

L社の社長は、組織改編に並々ならぬ熱意を注ぐ人物だ。年間に3~4回もの頻度で組織を変更し、その理由を「経営が思うように進まないのは組織に問題があるからだ」と説明している。彼にとって組織いじりは単なる趣味ではなく、会社の業績不振を解消するための「最善策」と信じているのである。


短命な組織と現場の混乱

社長は、自ら工場に足を運び、特定の係長や古参社員の意見を参考に新たな組織案を作成する。一見、現場の声を取り入れたプロセスに見えるが、その相談相手は毎回ほぼ同じ顔ぶれで、現場の管理職である工場長や部長は完全に蚊帳の外に置かれる。こうして作られた新組織案が、工場長や部長に提示されると、彼らは反対の意を示すものの、その意見が採用されることはない。

現行の組織ですら、たった三カ月前に社長が同じようなプロセスで決定したものであり、まだ機能を確認するには時間が不足している。それにもかかわらず、再び新しい組織案が提示される状況に、工場長たちはただ疲弊するばかりだ。

工場長たちの本音は明白だ。「どんな組織にも完全な形などありえない。せめて一年くらいは腰を据えて仕事をさせてほしい」。しかし、三カ月ごとに組織が変わる現状では、彼らの仕事は常に足元から崩れ、定着する余地がない。


組織ではなく経営の根本が問題

L社の問題は、本当に組織に起因するものなのだろうか?答えは否だ。その真因は、商品構成や価格政策といった経営の根幹にある。

L社の商品は数百種類にも及ぶが、実際に売れているのは40~50種類程度に過ぎない。さらに、その売れ筋商品の中でさえも類似品が多く、生産性を損なう要因となっている。ほとんど売れない商品の少量注文が頻発し、それが生産活動を混乱させるとともに、過剰在庫を生む原因となっているのだ。

それにもかかわらず、ここ数年で一つの商品も廃止せず、むしろ顧客からの要求に応じて新商品を次々と開発している。その結果、商品数は増加の一途をたどり、混乱がさらに深刻化している。

一方で、L社の主力商品は後進国での生産が拡大し、国内市場で逆輸入される状況に直面している。材料価格の高騰と価格競争の激化が追い打ちをかける中、L社の経営は迷走を続けている。


無策な価格政策と販売の放棄

L社の価格政策も深刻な問題を抱えている。デパートやスーパーを訪れた調査の結果、L社が設定したメーカー価格の4倍の価格で販売されている事実が明らかになった。これほどの価格差が生じる背景には、販売チャンネルの管理不足がある。

L社は問屋経由で小売業者に商品を供給する二段階構造の販売網を採用しているが、メーカー価格が小売価格の50~60%を占めるべきという業界の常識すら守られていない。この結果、L社の商品は市場で割高に見られ、競争力を失いつつある。

さらに問題なのは、販売そのものを問屋に丸投げしている点だ。顧客の声を直接拾い上げる努力がまったく見られない。「作るだけ」の姿勢がL社の業績不振を助長し、市場との乖離を広げているのだ。


真に問われるべきは経営姿勢

組織をいくらいじっても、経営の根本問題を解決しない限り、業績が改善することはない。L社が直面している課題は、以下のような本質的な問題に集約される。

  1. 商品構成の見直し: 売れない商品を大胆に廃止し、主力商品に経営資源を集中するべきである。
  2. 価格政策の再構築: 適正なメーカー価格を設定し、販売チャンネル全体の効率化を図るべきだ。
  3. 顧客ニーズへの接近: 問屋任せの販売から脱却し、顧客との直接的な関係を構築する努力が必要である。

組織いじりの先にあるもの

L社の業績不振の本質は「経営姿勢の欠如」にある。組織を頻繁に変更することで現場を混乱させ、根本問題から目を背ける経営スタイルは、事態を悪化させるだけだ。企業経営において、組織は重要な要素ではあるが、それはあくまで全体を支える一つの手段に過ぎない。

経営者が自社の商品や市場を直視し、顧客の要求を的確に把握する努力を怠らないこと。それこそが、L社が業績を立て直すために最も必要な第一歩である。


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