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テレビコマーシャルの行詰りを

S社はテレビコマーシャル制作において、軽妙なウィットや高い技術力、顧客を大切にする姿勢によって確固たる信頼を得ており、安定した業績を誇っていた。しかし、社長は次第に現状に物足りなさを感じ、会社の新たな方向性を模索し始めていた。

目次

安定した業績と新たな挑戦への意欲

事業の再定義:「映像」の可能性

ビデオ制作の展開と成功

新たな映像技術の導入と拡大

S社はテレビコマーシャルの制作を手がけ、その軽妙なウィットと確かな技術力で評価されていました。それ以上に、顧客を大切にする姿勢が顧客からの厚い信頼を集め、業績も好調でした。

S社の社長は、現在の会社には特段の不安はないものの、次第に物足りなさを感じるようになっていました。新しい事業に挑戦したいと考えてはいるものの、その方向性が見出せず、少し行き詰まりを感じていたのです。

そのような悩みを抱えていた社長は、私の「社長セミナー」に参加していた。セミナーで「我が社の事業を定義づける」という経営戦略の話を聞いているうちに、ふと「ハッ」とひらめきを得たのです。

「そうだ、我が社の事業を定義づけなければならない」と社長は気づきました。そして導き出された答えは、「我が社の事業は映像である」というものでした。

それまで、自他ともに「コマーシャル・フィルムの会社」と考え、そこにとらわれていたために、他の可能性を見出せずにいたのです。しかし、「映像」と事業を定義した瞬間、コマーシャル・フィルムという枠が外れ、視界が一気に広がりました。

まず最初に思いついたのは「コマーシャル・ビデオ」でした。社長によれば、このアイデアを得た瞬間、目の前がパッと明るくなったように感じたそうです。最初に取り組んだのは輸出品のビデオフィルムで、S社には他社が羨むようなビデオスタジオがあったため、すぐに活用に踏み切ることができました。

輸出品の商談で最大の障害となるのが「言葉の壁」です。特に性能や機構など、製品の重要なポイントを説明する場面では、専門知識を持たない通訳では的確に伝えることが難しく、商談が滞ってしまう原因となります。

ビデオであれば、しっかりと練り込んだ説明をあらかじめ吹き込んでおけばよく、どの国の言語でも対応が可能です。さらに、テープはVHS方式とベータマックス方式の二種類を用意することで、ほとんどの国で問題なく使用できます。

このビデオは輸出を行う企業にとって非常に心強い販促ツールとなります。ビデオの最初の制作依頼は生理用品の製造機械を扱うメーカーからでしたが、使用するとすぐに商談が成立し、先方からも「こんなに効果的な販促方法は他にない」と大変喜ばれました。

ビデオは輸出だけでなく、国内向けにも大きな効果を発揮します。わずか15~20分で必要な情報を伝えられるため、時間効率が良く、視聴者の理解度も他の手段に比べてはるかに高いのが特徴です。この短時間での情報伝達は、相手に負担をかけずに最大限の効果をもたらす理想的な方法といえます。

ビデオ製作にあたって、S社長はお客様の要望や目的を十分に聞き取り、細やかな打ち合わせを重ねました。この徹底した事前準備が功を奏し、出来上がったビデオはお客様から高い評価を得ていました。顧客のニーズに寄り添った姿勢が、S社の評判をさらに高める結果となったのです。

新事業の展開はこれだけにとどまりません。S社は、ビデオ・パネル、立体映像、CG(コンピューター・グラフィック)など、新しい映像技術の活用にも取り組み始めました。また、コマーシャル用途だけでなく、重要事項の記録映像や映像シミュレーションといった分野にも進出。これにより、S社は映像の可能性を多角的に広げ、さまざまなニーズに応える企業へと成長していったのです。

この二つの新たな分野は、相互に影響を与え合いながら、さまざまな面で大きなプラス効果を生み出し、さらには革新をもたらす可能性を秘めていました。S社はこの可能性に着目し、映像事業の幅を広げ、業界における新たな革新の担い手としての道を歩み始めたのです。

まとめ

S社は、テレビコマーシャルから「映像」事業全体へと事業の再定義を行うことで、新たな可能性を見出した。コマーシャル・ビデオ制作から始まり、輸出用ビデオや国内向け映像制作での成功に加え、立体映像やコンピューター・グラフィックなど新技術を導入し、映像の多角的な展開を実現している。この広がりが、映像事業としての革新性をもたらし、S社の成長をさらに加速させる基盤となった。

この事例では、S社がテレビコマーシャル・フィルム製作から「映像全般」を事業として再定義することで、新たな成長の機会を見出した点が重要です。社長が「我社の事業は映像である」と再定義したことで、コマーシャル・フィルムという限定された枠から抜け出し、広範囲にわたる映像の可能性が開け、事業が活性化されました。

1. 事業の再定義と視野の拡大

  • これまでコマーシャル・フィルムに特化していたS社は、事業を「映像」と再定義したことで、映像に関する様々な分野への進出が可能となりました。この定義変更によって、コマーシャル・ビデオ、企業向けの販促ビデオ、立体映像、CGといった新たな分野が次々と視野に入るようになったのです。

2. ビデオを活用した販促活動

  • 新たな取り組みとしてまず手がけたのが、輸出品の販促用ビデオです。ビデオを通じて製品の機能や性能を各国の言語で詳しく説明することで、言葉の壁を超え、海外の商談を円滑に進めることができました。短い時間でわかりやすく製品の魅力を伝えることができ、国内外の顧客に好評を博しました。

3. ビデオ・スタジオの活用と関連効果

  • 「映像」の定義に基づく事業展開は、S社が保有するビデオ・スタジオの活用機会も大幅に増加させ、ビデオ・パネル、立体映像、シミュレーションなど、幅広い製作の可能性が生まれました。このような拡大によって、S社はこれまでの顧客層を超えた新たな市場を取り込むことができました。

4. 定義づけによる企業の革新

  • 事業の定義づけが変わると、それまで見えていなかった潜在的な事業領域や新たなビジネスモデルが浮かび上がります。S社にとって、定義づけの変革は新たな事業を開拓し、同時に社員の意識も変える契機となりました。企業の進むべき方向性が明確になり、組織全体が革新と成長へと導かれました。

このように、事業の再定義によってS社は単なるテレビコマーシャル製作から「映像全般」のプロフェッショナルへと生まれ変わり、新たな価値を市場に提供できるようになったのです。

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