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■引用原文(日本語訳)
「自己(心)を静め、恐怖を離れ、梵行(禁欲)の誓いを守り、意を制御して、私に心を向け、私に専念し、専心して坐すべきである。」
(『バガヴァッド・ギーター』第6章 第14節)
■逐語訳(一文ずつ)
- 心(自己)を静かに保ち、
- 恐れを完全に捨て去り、
- 梵行(禁欲・純潔)の誓いを守り、
- 思考(意)を制御した上で、
- 神(クリシュナ)に心を向け、
- ひたすらに神に専念しながら、
- 静かに座すべきである。
■用語解説
- 自己(アートマン):ここでは特に「心」や「意識」の面を指し、内面の働きを意味する。
- 静める(プラシャンタ):心の動揺を鎮め、平穏な状態にすること。
- 恐怖を離れる(ヴィーラ・バヤム):不安・執着・失敗への恐れなど、内面的な怖れから解放されること。
- 梵行(ブラフマチャリヤ):禁欲、欲望からの離脱。広義では高潔な生活、誓いに従った清浄な行い。
- 意(マナス)を制御(サンヤマ):思考・注意を制御し、集中状態を保つこと。
- 私に心を向け(マイ・マナハ):ここでの「私」はクリシュナ=神の象徴。神への信仰・集中・帰依。
- 専念・専心(マドブクター/ユクタ):自我を超えて神に心を預け、絶対的に専心すること。
■全体の現代語訳(まとめ)
心を静め、不安や恐れを捨て去り、禁欲的な誓いを守りながら、思考を制御して、
神(クリシュナ)に意識を集中し、信念と集中をもって静かに座るべきである。
それが、真のヨーガの修行者の姿である。
■解釈と現代的意義
この節は、ヨーガの内面的完成に向けた精神的条件を明示しています。
単なる姿勢や集中だけでなく、**「恐れのない心」「純粋な生き方」「神聖への信仰」**が不可欠であると説いています。
現代人にとっても、「恐れからの自由」や「信じる対象の明確化」は、ブレない人生を歩むための鍵です。
それは宗教的信仰に限らず、理念・使命感・価値観への没入とも読み替えられます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と適用例 |
---|---|
恐れの制御 | 失敗や批判への恐れを克服することで、本来のパフォーマンスと創造力が発揮される。 |
倫理観と誓い | 利益追求の中でも、倫理や誠実さ(=現代の梵行)を守ることが、長期的信頼の基盤となる。 |
意識の集中 | ノイズに満ちた社会の中で、自分が「心を向けるべき対象」を明確にすることが、集中力と意義を高める。 |
信仰の現代的再定義 | 「神への心の集中」は、ビジネスにおいては「使命・理念・ビジョンへの一心不乱な集中」とも解釈可能。 |
■心得まとめ
「心を鎮め、恐れを捨て、誓いに従い、ただ一点を見つめよ」
集中とは、技術だけではない。心を清め、恐れを手放し、純粋な意志を持つこと。
信じるものに心を向けたとき、人はもっとも強く、もっとも静かに、もっとも深く働くことができる。
バガヴァッド・ギーターは教える――**「静かなる者が、もっとも偉大な行動を成す」**と。
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