■ 引用原文(『ダンマパダ』第八章「ことば」第十四偈)
真実のことばは不滅であるはずである。
実に真実のことばは最上である。
かれらは、真実――すなわちことがらと理法の上に安立したことばを語る。
■ 逐語訳と注釈
- 真実のことばは不滅である:真理にかなった言葉は、時代を超えて価値を持ち続ける。朽ちることがない。
- 真実のことばは最上である:語るべきものの中でも、最も価値あるのは虚飾なき真実の言葉である。
- ことがらと理法(ダンマ)の上に安立したことば:現実の事実(ことがら)と、倫理・真理・道理(理法)の両方に支えられた発言。
- かれらは語る:修行者や賢者、真理を知る者たちは、そのような言葉を選んで語る。
■ 用語解説
- 真実(サッチャ):事実に反せず、偽りや誇張のない言葉。仏教では五戒のひとつ「妄語を避ける」にも直結。
- 不滅(アナンタ):時間や環境の変化に左右されず、永遠の価値をもつもの。
- 理法(ダンマ):道理・法則・真理。宇宙と人生を貫く根本原理。
- 安立(アンティタ):確固として据えられている状態。基盤がぶれないこと。
■ 全体の現代語訳(まとめ)
真実に基づいた言葉は、決して朽ちることがない。
それは時代や状況が変わっても価値を持ち続ける、不滅のものである。
このような言葉こそが、語るべきものの中で最上であり、
聖者や賢者たちは、事実と真理に支えられた、確かな言葉だけを語るのである。
■ 解釈と現代的意義
この偈は、**「ことばの永続的価値は“真実性”に宿る」**という極めて普遍的な原理を述べています。
人は時に、美辞麗句や巧妙な言い回しに惹かれがちですが、
仏陀は「最も力を持ち、永く尊ばれる言葉は、虚飾ではなく“真実”である」と明言します。
真実のことばは、聞く人の心に深く届き、時が経っても記憶に残り、人の生き方を変える力を持ちます。
だからこそ、「今この瞬間に通じるだけの言葉」ではなく、
「時代と心を超えて届く言葉」を語る意識が、人格の成熟と信頼につながるのです。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
経営理念・ビジョン | 本当に真実と信念に根差した言葉は、時代や業績を超えて、組織の魂として残り続ける。 |
顧客との対話 | 本音と誠意で語る言葉は、表面的な営業トークよりも、はるかに深く顧客の信頼を得る。 |
内部コミュニケーション | 一貫性のある、誠実で事実に即した言葉遣いは、長期的に信頼を築く。逆に虚飾はすぐに剥がれる。 |
パブリックメッセージ | SNSや広報においても、真実性に立脚した発信は共感と尊敬を集め、誤魔化しは炎上を招く。 |
■ 心得まとめ
「真実に立つ言葉は、時を超えて人の心に灯る」
この偈が示すのは、語る者が「ことがら」と「理法(真理)」という二つの柱に立脚することの大切さです。
事実だけでも冷たく、理想だけでも空虚です。両者が備わってこそ、言葉は本当の力を持ちます。
ビジネスにおいても、真実を語る姿勢を貫くことが、ブランドや人間関係の信頼の源泉となります。
飾らず、誠実に、真理を語る言葉――それこそが、人を動かし、歴史を変える言葉なのです。
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