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■引用原文(日本語訳)
聡明な人は瞬時のあいだ賢者に仕えても、ただちに真理を知る。
舌が汁の味をただちに知るように。
——『ダンマパダ』第5章 第65偈
■逐語訳
- 聡明な人は瞬時のあいだ賢者に仕えても:理解力と感受性のある者は、わずかの接触でも賢者から深い学びを得る。
- ただちに真理を知る:その言葉や行いの本質を即座に理解する。
- 舌が汁の味をただちに知るように:味を知る器官である舌が、一滴であっても味を見分けるように。
■用語解説
- 聡明な人(ヴィジャー・マタ):知識の多さではなく、「感受性」「探究心」「内省力」を備えた者。
- 瞬時のあいだ(ムフッタマットタム):ごく短い時間。わずかな接触、学びの機会。
- 舌が味を知る:比喩的に「本質を即座に見抜く直感力と理解力」を意味する。
- 真理(ダンマ):仏法・因果の道理・物事の本質。
■全体の現代語訳(まとめ)
聡明な者は、たとえほんのわずかな時間しか賢者と接することができなかったとしても、
その教えの本質をすぐに見抜き、悟りを得ることができる。
それはちょうど、舌がスープをひと口でその味を知るようなものだ。
本質に気づける心を持つ者は、少ない体験からでも深く学び取るのだ。
■解釈と現代的意義
この偈は、学びの本質が「時間の長さ」や「形式」ではなく、「受け取る力」「感性」にあることを教えています。
たとえ短い出会いや一言の助言でも、そこに心を開き、真剣に向き合えば、人生を変えるほどの気づきを得られる。
逆に、どれだけ長くそこにいても、学ぶ姿勢がなければ空虚に終わる(第64偈との対比)。
つまり、成長するために必要なのは「どれだけ学んだか」ではなく、「どう学んだか」である。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
フィードバックの受け取り方 | 数分の面談でも、真摯に受け取る人は変わる。一方、何度の指導も聞き流す人は変わらない。 |
経営判断 | 短時間の対話でも、本質を見抜き判断する力を持つリーダーは、変化に強く、先を見通す。 |
キャリア形成 | 偉大な人物と過ごす時間は短くても、自分のあり方を変える“きっかけ”になる。大事なのはその濃度。 |
OJT・教育 | 教える内容以上に、「感じ取れる人」が成長する。受講時間ではなく“気づき”が鍵となる。 |
■心得まとめ
「一滴の言葉にも、宇宙の真理が宿る」
真の学びは、長さではなく「質」と「姿勢」で決まる。
一言の助言、一瞬の出会いでも、自分を変える力を持つ。
それに気づける人こそ、本当の聡明さを備えている。
学びたいと願う者には、世界そのものが教師となる。
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