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君子とは、信じて託されるに足る人

― 一国の未来も、幼き命も預けられる人格

曾子(そうし)は、君子とは何者かを語った。

幼い孤児の君主を預けても心配なく、
一国の命運を託されても揺るがず、
重大な局面に臨んでも節を曲げない――

そんな人物こそが、本物の君子であると断言した。

知識や能力よりも、信頼に値するかどうか
一国の政(まつりごと)や、幼子の未来を任せられる「器量と誠実さ」が、君子の本質なのだ。


原文と読み下し

曾子(そうし)曰(い)わく、以(もっ)て六尺(ろくせき)の孤(こ)を託(たく)すべく、以て百里(ひゃくり)の命(めい)を寄(よ)すべし。大節(たいせつ)に臨(のぞ)んで奪(うば)うべからざるなり。君子人(くんしじん)か。君子人なり。


注釈

  • 六尺の孤(ろくせきのこ):若くして親を亡くした幼い君主。身長約130cm程度の子ども。転じて、弱きもの・未来を託すべき存在の象徴。
  • 百里の命(ひゃくりのめい):百里四方の国の政治・統治を任せられる力。為政者としての責任と信頼。
  • 大節に臨んで奪うべからざるなり:人生や国家の重大な岐路にあっても節義を曲げないこと。忠義・信念・一貫性の表れ。
  • 君子人か。君子人なり:これは反語と強調の形で、**「まさに君子である」**との力強い断言。

補足:加藤清正のエピソード

この章句は、加藤清正が豊臣秀頼を守り抜いた際の心の支えとなった言葉としても知られます。
晩年、前田利家からこの教えを受けたことを思い出し、涙を流して語ったという逸話は、
この言葉に込められた重みと行動の一貫性を物語っています。

原文:

曾子曰、可以託六尺之孤、可以寄百里之命、臨大節而不可奪也、君子人與、君子人也。


書き下し文:

曾子(そうし)曰(いわ)く、六尺(ろくせき)の孤(こ)を以(もっ)て託(たく)すべく、百里(ひゃくり)の命(めい)を以て寄(よ)すべし。大節(たいせつ)に臨(のぞ)んで奪(うば)うべからざるなり。君子人(くんしじん)か。君子人なり。


現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  • 「六尺の孤を以て託すべく」
     → 六尺(10代前後)の幼い孤児を安心して託すことができるような人物。
  • 「百里の命を以て寄すべし」
     → 百里にわたる国の統治を任せられるような信頼ある人物。
  • 「大節に臨んで奪うべからざるなり」
     → 国家の重大事や節義の場において、決して節を曲げない人物である。
  • 「君子人か。君子人なり」
     → 君子と呼べる人物か? そう、まさしく君子(人格者)である。

用語解説:

  • 六尺の孤(ろくせきのこ):成長途中の少年(約10代前後)で、父を亡くした跡継ぎ。国家的に重要な存在。
  • 百里の命(ひゃくりのめい):一地方(百里四方)の政治や軍政を任せる統治権の象徴。責任の重さを表す。
  • 大節(たいせつ):命をかけるような重大な節義・道徳的判断の場。
  • 君子人(くんしじん):高潔な人格と信頼性を備えた人物。理想的な道徳的人間像。

全体の現代語訳(まとめ):

曾子はこう言った:

「幼い後継者を安心して託すことができ、国や地域の統治を任せられるほど信頼され、
さらに国家的な重要局面においても節を曲げることのない人──そういう人こそ、本当の“君子”である。」


解釈と現代的意義:

この章句は、**「真に信頼される人物像」**を定義した、曾子の人物評価の言葉です。

  • 幼い子を託される → 人格と誠意への絶対的信頼
  • 地域統治を任される → 能力と統率力への制度的信頼
  • 節を曲げない → 倫理的判断の場面での道徳的信頼

つまり「人を任せられる人物」とは、スキルや成果だけでなく、「人格・判断・信念」の全てにおいて揺るがない存在であることが求められます。


ビジネスにおける解釈と適用:

1. 「任されるとは、信頼の総合評価である」

  • 能力だけでなく、誠実さ・倫理観・判断力の三拍子が揃ってこそ、真に“任せられる”人材となる。
  • 経営や管理職に求められるのは、知識やスキルだけではなく、“背中で信頼される”力。

2. 「人材登用の基準に“節を曲げぬ人”を」

  • 実力主義だけで人を抜擢すると、組織の節が歪む。
  • 倫理的判断を譲らない人材が、組織の風土と信頼を守る。

3. 「任されるとは、“自分がいなくても安心”と思わせる力」

  • 後継者の育成や事業の継続において、安心して託せる人物かどうかが最終的な評価基準。
  • 「何かあっても、あの人なら大丈夫」と思わせる人が、真のキーパーソン。

ビジネス用心得タイトル:

「人を託され、国を任され、信念を曲げぬ者──信頼の三条件が“君子人”をつくる」


この章句は、リーダーの資質、後継者の育成、信頼に値する人物像を説く、組織経営において極めて実践的な教訓です。

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