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人を信じるとは、その過去をも超える覚悟である
魏徴が謀反を企んでいると讒言されたとき、太宗はそれを一蹴した。
魏徴はかつて太宗の敵である兄・建成の配下だった――にもかかわらず太宗は、彼の忠義を認めて重用していた。
「彼がかつて敵だったからこそ、その忠義は本物である」と信じた太宗は、告発者の讒言を即座に見抜き、魏徴に問いただすことすらせず、告発者を斬刑に処した。
このエピソードが示すのは、「忠義を疑うことの重大さ」と「信義の価値」である。
忠臣を守ることは、単に一人の身を守ることではなく、国家の根幹にある「信」の礎を守ることにほかならない。
逆に、根拠なき讒言を許せば、忠義が報われず、正しき人材は去っていく。
信なくして、国は治まらない。
出典(ふりがな付き引用)
「魏徵(ぎちょう)、昔(むかし)吾(われ)の讎(あだ)なり。ただ忠(ちゅう)を以(もっ)て君(きみ)に事(つか)えたるがゆえに、吾(われ)抜(ぬ)きて之(これ)を用(もち)う」
「何(なん)ぞ乃(すなわ)ち妄(みだ)りに讒(ざん)を生(しょう)ぜん」
「竟(つい)に徵(ちょう)を問(と)わず、遽(にわ)かに讒者(ざんしゃ)を斬(き)る」
注釈
- 魏徴(ぎちょう):太宗の名臣で、かつては敵対勢力に属していたが、その忠義により重用された。
- 讎(あだ):仇敵、敵対者のこと。
- 讒(ざん)を生ず:事実に基づかず、他人をおとしめようとする中傷・讒言を行うこと。
- 遽(にわ)かに斬る:即座に斬刑に処す。誣告の重大さを示す厳罰。
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