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自らの影を見つめる者こそ、真に清らかである


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📖引用原文(日本語訳)

他人の過失は見やすいけれども、自分の過失は見がたい。
ひとは他人の過失を殻のように吹き散らす。
しかしこの人も自分の過失は隠してしまう。
狡猾な博師が不利な骰子の目をかくしてしまうように。
――『ダンマパダ』 第二七章「観察」第一節


🧩逐語訳

  • 他人の過失は見やすい:他人の欠点や過ちにはすぐに気づく。
  • 自分の過失は見がたい:自分の欠点には気づきにくい、あるいは気づこうとしない。
  • 殻のように吹き散らす:他人の失敗はささいなことであっても、風で吹き飛ばす殻のようにあげつらい、拡散してしまう。
  • 狡猾な博師:ずる賢いギャンブラー。
  • 骰子(さいころ)の目をかくす:自分に不利な事実(真実)を巧妙に隠す様子。

🧠用語解説

  • 観察(paccavekkhaṇa):内省・自己省察を意味する仏教語。自分の心の動きや行動を注意深く見つめること。
  • 博師(ばくし):博打を職業とする者。ここでは比喩的に「ずる賢く真実を隠す人」の象徴。
  • 殻(から):不要な物、軽く無価値なものの象徴。吹けば飛ぶようなことで人を責める軽率さを表す。

🪷全体の現代語訳(まとめ)

他人の過失を見つけることは容易で、ささいな失敗さえも広げて非難しがちである。
しかしその一方で、自らの過ちについては見ようとせず、まるで不利な目が出た骰子を隠すように、自分にとって都合の悪い部分を覆い隠す傾向がある。
この偽りの態度こそが、真の成長を妨げる障壁である。


🌱解釈と現代的意義

この句は、私たちの内面にある「他責的な眼差し」と「自己正当化の欲望」を鋭く指摘しています。他人の失敗や短所にはすぐに反応しながら、自分の落ち度には気づかず、あるいはあえて見ぬふりをする――こうした姿勢は、心の成熟から私たちを遠ざけます。
現代社会においても、SNSでの誹謗や職場での責任転嫁など、この警句の現代的な実例には事欠きません。自己観察の大切さが、千年以上前から変わらぬ真理として語られているのです。


💼ビジネスにおける解釈と適用

観点実務への応用例
リーダーシップ部下の失敗ばかりを叱責せず、自らの判断ミスや指示の曖昧さにも目を向ける。自省力のあるリーダーは信頼される。
フィードバック文化他者を評価・批判する前に、自分の立ち居振る舞いがどうだったかを一度振り返る習慣を持つ。
改善と学びトラブルの責任を周囲に押し付けるのではなく、自分の改善余地を見つけることで組織の成長に貢献できる。
誠実な報告自身にとって不利な数字やミスも、誠実に報告し対策を講じる文化をつくる。

📝心得まとめ

「他人の失敗は風のように伝わる。だが、成長する者は、自らの影をこそ見つめる。」

成熟とは、自分の過ちに真正面から向き合い、他人の過ちを裁く前に、己の未熟さを静かに見つめる姿勢に宿る。自らの目を自らに向けることが、真の進化の第一歩なのです。


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