飲み食いの楽しみにばかり耽(ふけ)るような家は、良い家庭とは言えない。
どれほど経済的に豊かであっても、日々の関心が宴会や贅沢に傾きすぎているならば、
そこには節度や品格、精神的な豊かさが欠けている。
また、名声や評判を追いかけることを習い性とする者は、真に立派な人物ではない。
表面の華やかさに価値を置き、内面の実質を疎かにする生き方は、
本当の人望や尊敬を得ることはできない。
さらに、功名や地位を追い求める心が強すぎる人は、良き部下、良き仲間とはなりえない。
高い地位ばかりを見つめ、私利私欲を優先するようでは、
組織や共同体に誠実さや協調性をもたらすことは難しい。
つまり、人生においても仕事においても大切なのは、
- 控えめで慎みある態度
- 精神の品格
- 欲望より徳を尊ぶ心
こうした基本があってこそ、家庭も人間関係も組織も長く健全に保たれる。
原文(ふりがな付き)
「飲宴(いんえん)の楽しみ多きは、是(こ)れ個(こ)の好人家(こうじんけ)ならず。
声華(せいか)の習(なら)い勝(まさ)るは、是れ個の好士子(こうしし)ならず。
名位(めいい)の念(おも)い重(おも)きは、是れ個の好臣士(こうしんし)ならず。」
注釈
- 飲宴(いんえん):飲み食いや宴会、贅沢な生活の象徴。
- 好人家(こうじんけ):立派な家庭、品格ある家庭。
- 声華(せいか)の習い:名声・華やかさを好み、見せびらかす性質。
- 好士子(こうしし):真に立派な人物、君子。
- 名位の念(めいいのねん):名声・地位・権力への強い執着。
- 好臣士(こうしんし):忠義に厚く徳のある部下や仲間。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
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(真の価値は贅沢や名声にあらず)modesty-builds-better-lives
(慎ましさが良き人生を築く)avoid-excess-pursue-virtue
(過剰を避け、徳を求めよ)
目次
『菜根譚』後集完了によせて
この第200条で後集も締めくくられますが、全体を通じて『菜根譚』が語ってきたのは、
見かけや欲望に惑わされず、真実・誠実・節度を大切にし、柔らかく強く生きる人間像です。
日常生活の中での小さな選択、
人間関係における言葉や態度、
困難な時代にどう向き合うか――
そうしたすべての場面において、本質を見誤らず、自分を見失わない姿勢を貫くことが、
君子の道であり、私たち一人ひとりが目指すべき姿でもあります。
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