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苦しみと喜びを経て得た幸福こそ長く続き、疑いと信を往還して練られた知恵こそ本物となる

人は、苦しみや試練を経て、喜びにたどり着く。
その一つひとつの経験を丁寧に積み重ね、練り上げるようにして得た幸福こそ、
一時的な快楽ではなく、長く心に根を張る「本当の福」となる。

同じように、知識や知恵も、ただ情報として耳に入れただけのものではなく、
疑いと信頼を行き来しながら、自ら考え、比較し、悩み抜いた末に得たものであってこそ、
初めて「真の知」となる。

苦労せずに得た情報は、風に吹かれる砂のように頼りない。
だが、血肉に変えるように学んだ知恵と、人生を懸けて得た喜びは、
誰にも奪えない本物となり、生涯にわたって自分を支えてくれる。


原文とふりがな付き引用

一苦一楽(いっくいちらく)、相(あい)磨練(まれん)し、練(ね)り極(きわ)まりて福(ふく)を成(な)すものは、その福(ふく)始(はじ)めて久(ひさ)し。
一疑一信(いちぎいっしん)、相(あい)参勘(さんかん)し、勘(かん)極(きわ)まりて知(ち)を成(な)すものは、その知(ち)始(はじ)めて真(しん)なり。


注釈(簡潔に)

  • 一苦一楽:苦しみと楽しみを交互に味わうこと。人生の実体験。
  • 相磨練(そうまれん):時間をかけて丹念に練り上げていくこと。修行的プロセス。
  • 参勘(さんかん):疑いと信を往復しながら、自ら調べて深く考えること。単なる受け売りではない。
  • 知始めて真なり:「体験+思索」によって初めて得られる本物の知恵。

パーマリンク案(英語スラッグ)

true-wisdom-needs-struggle
「真の知は苦闘の末に生まれる」という本条の核心を表したスラッグです。

その他の案:

  • earned-joy-lasts-long
  • deep-thinking-makes-true-knowing
  • refined-by-trial

この章は、体験と内省があってこそ本物になる、という古典的かつ実践的な教訓を与えてくれます。
現代の“即席知識”が溢れる時代においては、特に重みのあるメッセージといえるでしょう。

1. 原文

一苦一樂相練、練極而成福者、其福始久。一疑一信相參勘、勘極而成知者、其知始眞。


2. 書き下し文

一苦一楽、相(あい)練(ね)られ、練(ね)り極(きわ)まりて福を成す者は、その福始(はじ)めて久(ひさ)し。
一疑一信、相参勘(そうさんかん)し、勘(かん)じ極まりて知を成す者は、その知始めて真(しん)なり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳す)

  • 一苦一樂相練、練極而成福者、其福始久。
     → 苦しみと楽しみが交互に現れて鍛えられ、十分に練られた上で得た幸福は、はじめて長く続く本物の幸福となる。
  • 一疑一信相參勘、勘極而成知者、其知始眞。
     → 疑いと信じる心とを行き来しながら、深く調べて極めたうえで得た知識は、はじめて真実の知識であると言える。

4. 用語解説

  • 一苦一楽(いっくいちらく):人生における苦しみと喜び、それぞれの経験。
  • 相練(あいねる):互いに磨き合い、鍛え合うこと。
  • 練極(ねりきわまる):十分に練り上げられた状態。熟達・成熟。
  • 参勘(さんかん):複数の視点から比較し、深く検討・調査すること。
  • 疑(うたがい)/信(しん):迷いや不確かさと、確信・信頼の対比。
  • 知(ち):単なる情報でなく、深く確かな理解・智慧。
  • 始久(しきゅう)/始眞(ししん):初めて永続する、初めて本物となる。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

苦しみと楽しみを繰り返し体験し、その両方を通じて練られた結果として得た幸福は、初めて長続きする真の幸福である。
同様に、疑いと信頼を交互に持ちながら深く考察し、試行錯誤の末にたどり着いた知識は、初めて真実の知識といえる。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「対極の体験こそが、真の幸福や智慧を育てる」という深い人生観を語っています。

  • 楽だけで得た幸福は浅く、苦だけの中の幸福は感じにくい。両方を経験することで**“本物の幸福”**が生まれる。
  • 無批判な信頼や、根拠なき懐疑は知を遠ざける。疑いと信頼のバランスこそが“真の知”を生む土壌となる。

このように、「二元の緊張を通してこそ成熟に至る」という哲理は、修養論としても現代に通じる示唆を持ちます。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

▪ 苦と楽を繰り返して得た成功は、ブレない価値を持つ

新規事業や経営の成果も、一度の成功だけで安定はしない。
試行錯誤・挑戦と失敗・達成の連続を通じて得た成功こそ、“本物”で長続きする。

▪ 疑いと信頼をバランスよく持つ人が、組織に真の知恵をもたらす

すべてを鵜呑みにするのではなく、かといって何でも否定的に見ない。
慎重に検証し、信じるべきときに信じる力がある人こそ、真に頼れる人材。

▪ 探求・内省を恐れない文化づくり

短絡的な正解探しではなく、「失敗を含むプロセス」や「不確かさと向き合う姿勢」が
イノベーションや洞察を育てる土壌となる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「苦楽を通じて福が定まり、疑信を経て知が深まる──“揺れ”が人を磨く」


この章句は、人生の困難や不確かさを単なる障害とせず、それこそが深さと本物をもたらす鍛錬の道であると教えています。
一方向からの成功ではなく、両極を生きることで人は熟する──そんな温かくも厳しい叡智がここには込められています。

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