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極端を知り、中を取る。これこそ真の智慧である


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■引用原文(『中庸』第六・第七章)

子曰、舜其大知也与。舜好問、而好察邇言。隠悪而揚善。執其両端、用其中於民。其斯以為舜乎。
子曰、人皆曰予知、駆而納諸罟陥之中、而莫之知辟也。人皆曰予知、択乎中庸、而不能期月守也。


■逐語訳

  • 舜其大知也与:舜はなんと偉大な智慧の持ち主だったことか。
  • 好問、而好察邇言:人の話を熱心に尋ね、身近な些細な言葉にも注意を払った。
  • 隠悪而揚善:悪を隠し、善を表に出す。
  • 執其両端、用其中於民:両極端の意見を把握し、その中庸を民に応用した。
  • 予知、駆而納諸罟陥之中、莫之知辟也:人は皆「私は知っている」と言うが、罠に追い込まれてもそれを避けられない。
  • 択乎中庸、而不能期月守也:中庸を選んだとしても、一か月すら守り続けることができない。

■用語解説

  • 大知(たいち):表面的な知識ではなく、深い洞察と実践を備えた真の知恵。
  • 邇言(じげん):身近な人の何気ない言葉や小さな声。
  • 隠悪揚善(いんあくようぜん):他人の過失は責めず、長所や美点を引き出して光を当てる姿勢。
  • 両端を執る(りょうたんをとる):両極を理解・受容したうえで、その中間(中庸)を活かすこと。
  • 罟陥(こかん):罠や落とし穴。誘惑や試練の象徴。
  • 期月(きげつ):一か月という期間。継続の象徴。

■全体の現代語訳(まとめ)

孔子は語る――
舜は偉大な知者であった。人に尋ねることを好み、身近な小言にも真摯に耳を傾けた。批判ではなく賞賛によって人を導き、意見の両極をつかみ取り、その中間を民の施政に活かした――まさにそれが「舜」と呼ばれるにふさわしい所以である。

また孔子は嘆く――
人は皆「自分は分かっている」と口にするが、実際には目の前の罠すら避けられない。中庸の正しさに気づいたとしても、それを継続することができない者がほとんどである。


■解釈と現代的意義

この章句は二つの重要な教えを含みます:

❶ 真の知恵とは「聴く力と調和の実践」である

聖王・舜は、高所から押しつける統治をせず、身近な声に耳を傾け、善を伸ばし、極端を知った上で中を取る――多様性と節度を調和させた賢明なリーダー像が浮かび上がります。

❷ 知識と実践の乖離が人間の弱さ

人は「知っている」と思い込むが、実は容易に誘惑や傲慢に陥り、中庸という持続的で柔軟な態度を保てない。これは現代でも見られる、知識過剰・実践不足の問題を鋭く突いています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈・適用例
リーダーシップ優れたリーダーは「質問力」と「傾聴力」がある。表面的な意見で判断せず、多様な声を受け止め、そこから最適解(中)を見出す。
組織運営人材の弱点を過度に指摘するよりも、長所に光を当てて伸ばす「隠悪揚善」の姿勢が組織の信頼と成長を生む。
判断とバランス極端な主張だけでなく、両端の意見を踏まえたうえで適切なバランスをとる力=中庸が、安定した意思決定を可能にする。
継続力と習慣化「分かっている」ことを継続して行うのは難しい。中庸の実践には、内省・謙虚さ・習慣の積み重ねが必要。口ではなく“行い”が人を分ける。

■心得まとめ

「よく聴き、ほどよく執り、中をもって治めよ」

真の知とは、自分の意見を押し通すことではなく、多様な情報と感情のバランスをとることにある。
そして中庸は、理解するだけでは意味がない。継続して実践してはじめて力を持つ
現代の私たちにとっても、「知っているつもり」から脱し、舜のように日常の声に耳を澄ませ、「中をとって用いる」ことが真の成長と影響力の鍵である。

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