濃い味の料理は、素材をごまかしてしまい、真の味とは言えない。
本当にうまい料理は、むしろ淡く、素材の持ち味を活かしたものだ。
人もまた同じで、本物の人物は目立つでもなく、奇抜でもなく、
あくまでも自然で、平凡な姿をしている。
見た目や才能の派手さに惑わされず、静かな深さを持つ「常」の中にこそ、本質が宿る。
「醲肥辛甘(じょうひしんかん)は真味(しんみ)に非(あら)ず。
真味は只(ただ)是(こ)れ淡(たん)なり。
神奇卓異(しんきたくい)は至人(しじん)に非ず。
至人は只是れ常(じょう)なり。」
注釈:
- 醲肥辛甘(じょうひしんかん)…濃い酒や脂の多い料理、辛さ・甘さなど強い味。つまり刺激的で誇張されたもの。
- 真味(しんみ)…本当の味。自然で飽きが来ず、素材の良さがにじみ出る味。
- 淡(たん)…あっさりとした、静かな味わい。控えめだが奥深い。
- 神奇卓異(しんきたくい)…驚くような才能や特別さで人目を引く存在。表面的な非凡さ。
- 至人(しじん)…真に完成された人物。卓越した精神を持ちながら、外見はごく普通である人。
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