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静けさの中にこそ、真の主体は目覚めている


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■引用原文(日本語訳)

すべての行為を意により放擲して、支配者たる主体(個我)は、九門の都城*において安らかに坐する。何も行為せず、行為させず。
(第5章 第13節)
*九門の都城:人間の身体をたとえて言った言葉。九つの穴(目・鼻・耳・口・肛門・尿道)を持つ「城(身体)」の中に、主体(真我/アートマン)は宿る。


■逐語訳

行為をすべて意(心)の中で手放した者は、自己(アートマン)として、九つの門を持つこの身体という都城において静かにとどまる。
その者は自ら何も行わず、他に何かを行わせることもない。


■用語解説

  • 行為を放擲する:実際の行為をやめるのではなく、「行為に対する自我の執着」を手放すこと。
  • 支配者たる主体(プラブフ):肉体の中に宿る真の自己。行為の背後にある、観照する意識。
  • 九門の都城:人間の身体。外界との接点(9つの穴)を持ちつつも、内面では静かな存在が見守っていることを象徴。
  • 行為せず/行為させず:真我(アートマン)は単なる観照者であり、主体的に何かをすることも、他者にさせることもない。

■全体の現代語訳(まとめ)

すべての行為への執着を心の中で手放した人は、身体という城の中に静かに座す存在(真我)としてとどまり、何も行うことなく、何かを他者にさせることもない。ただ在り、見守っているだけである。


■解釈と現代的意義

この節は、ギーターの核心の一つである「観照者としての自己(アートマン)」を描いています。私たちは普段、「自分が考え、自分が行い、自分が影響を与えている」と信じていますが、深い精神的視点から見れば、真の自己は「行為の背後にある、静かな観察者」です。

この認識は、ビジネスや日常生活で「やりすぎ」「責任を抱え込みすぎ」「コントロールしすぎる」傾向にある現代人に、非常に有効な指針となります。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
セルフマネジメント「自分がすべてをやらなければ」という思いを手放し、自我から少し距離を取ることで、心の余裕が生まれる。
マネジメントチームを「コントロールする対象」と見るのではなく、「観察し、信じ、任せる」ことで、より自然な運営ができる。
メンタルヘルス自分の内面に「静かに座す観照者」がいると感じるだけで、感情やプレッシャーに巻き込まれにくくなる。
自己認識身体や思考に反応する“私”の奥に、動じない“本当の私”がいるという理解は、困難な場面での軸になる。

■心得まとめ

「行為を手放し、ただ坐する――そこにこそ真の力がある」
成果を出すこと、動き続けることが尊ばれる社会の中で、ただ「存在する」ことに価値を置ける人は強い。
執着を捨て、静けさにとどまり、自己の奥にある観照者として生きる――それが行動と平穏を両立するための智慧であると、ギーターは教えてくれます。


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