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己を恥じ、己を律する者こそ、真の強者


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■引用原文(日本語訳)

第十章 暴力(ダンダヴァッガ)第143偈

みずから恥じて自己を制し、
良い馬が鞭を気にかけないように、
世の非難を気にかけない人が、
この世に誰か居るだろうか?

(『ダンマパダ』第143偈)


■逐語訳

  • みずから恥じて自己を制し:自らの過ちを認め、内省し、行動を律すること。
  • 良い馬が鞭を気にかけないように:優れた馬が、鞭ではなく自らの訓練で行動を制御するように、
  • 世の非難を気にかけない人:他人の批判ではなく、自分自身の基準によって善悪を判断できる人。
  • この世に誰か居るだろうか?:このような高度な人格を持った人が、果たして存在するだろうかという反語的問い。

■用語解説

  • 自己を制する(アッタナン・ダンティ):自律・自制の意。感情や欲望を抑え、自己を整えること。
  • 良い馬(アッサ・ウットタマ):ここでは比喩。訓練された優秀な存在。すぐれた人格の象徴。
  • 鞭を気にかけない:外からの強制力ではなく、自発的な意思によって制御されている状態。
  • 非難(ニンダー):世間からの悪口・批判・中傷。

■全体の現代語訳(まとめ)

自らの過ちを恥じ、自己を律しながら生きる者。
まるで訓練された名馬のように、他人の鞭ではなく、自らの意志で正しく歩む者。
そのように、世の非難に動じない人が、この世界にどれほど存在するだろうか?


■解釈と現代的意義

この偈は、「外からの評価ではなく、自分自身の倫理に基づいて生きる」ことの重要性を説いています。
多くの人は、賞賛を求め、非難を恐れます。しかし、ブッダはそうした「他者依存の人生観」を超えて、
自らの行いに対して恥じるべきかどうかを判断し、自己制御できる者こそが真に尊いと説きます。

「良い馬が鞭に頼らず進む」ように、外的強制ではなく、内的な自律こそが成熟の証なのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
自主性と自律のある働き方上司の監視や評価を気にせず、自らの仕事の意味と価値を考えて行動する人は、真の信頼を得る。
批判に動じない精神力SNSや社内の噂など、外からの評価に一喜一憂するのではなく、自分の信念と誠実さを基準とする。
真のリーダーシップリーダーは、人気取りではなく、時に批判を受けながらも正しい判断を貫く自律性が求められる。

■心得まとめ

「誠実とは、他人に見られていなくても、己が恥じない行いをすること」

ブッダはここで、「善き人とは、外からの批判に左右されることなく、自己の倫理に従って行動する者」であると教えています。
訓練された馬が鞭なしで正しく進むように、私たちも他者の評価より、自らの心の基準を頼りに生きるべきなのです。

それは簡単ではない。だが、それゆえに尊い。


この偈は、前偈(第142偈)の「見た目に惑わされず行いで人を量る」というテーマの延長として、自己の倫理的基盤の確立を語っています。

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